ごみ箱

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「A〜？」


手馴れたように開けられた玄関と、ズカズカと遠慮のない足音。
思わず口から零れそうになった溜め息はそっと飲み込んで、小さく作った笑顔


『颯太、足音うるさいよ(笑)』


「いーじゃんAの部屋１階なんだし(笑)」


我が物顔でうちの冷蔵庫を開いた颯太は左手にぶら下げて来た白い箱をそこに詰め込むと、いつもの調子でヘラヘラ笑う。


『もう観る？』


「んー、ちょっと待って」


冷蔵庫を閉めた颯太が徐にベランダを開けたかと思うと、ちょっとだけ怒ったような表情を零してテレビの前でスタンバってる私を振り返るから、

もう、なにいきなり、怖いんだけど



「ねぇ」


『な、なに』


「おれのパンツは！」


『パンツ…？』


「外からみたときないなって思ったの！」



プリプリしながらベランダを閉めた颯太がそう言って、思い出すパンツの存在。

丁度昨日降った雨のせいで帰宅した頃にはビシャビシャになってしまっていたそれ、
昼間洗って私の洗濯物たちとコインランドリーの乾燥機に突っ込んできたのすっかり忘れてた。



「女の子で１階なんてあぶないんだから、ちゃんと干しとけっていつもいってるじゃん！」


『颯太、留守番してて。コインランドリー行ってくる』


「ねぇ、おれの話きいてる？！」


『聞いてる聞いてる』




颯太の小言を背中に、足早に向かう玄関。

颯太が言う女の子って言葉が、むず痒くてちょっぴり痛くて、パタンとわざと大きく閉めたドアの先。
ちょっとだけ零れた涙を慌てて拭えば、ポケットに押し込んだスマホがバイブで知らせてくる着信。



『もしもし、あじ？』


「(ねぇ、Aいま何してる？)」


『今？これからコインランドリーいく』


「(今さ、黒ちゃんたちといるんだけど、痛っ、ちょ！)」


『おーい？あじ？』


「(っもしもし！Aちゃん？！)」


『黒田？！久しぶり〜元気？』


「(うん！めちゃくちゃ元気！)」


あじの落ち着いた声から黒田のうるさい声に変わった耳元、
うるさ！ってスマホを遠ざけたけど、懐かしい気がするその感じに思わず笑みが零れる


「(ねぇねぇ、今日ね、あじたちとこれからバーベキューするの！Aちゃんも来てよ〜！うちむも誘ってさ！)」


『これから？っ、あ』



閉めたはずのドアが開いて、背中にドアノブが当たった痛みに振り返れば
靴を履いて私のランドリーバッグを手にした颯太が私を見下ろす姿。

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