それぞれのバレンタイン/いつかふと ページ28
その場所独特な匂いがする白い扉、
ノックしようとした手がちょっとだけ震えてるのを感じて、慌てて作った笑顔。
「ひらつ、やっほ」
「くろちゃんじゃん(笑)」
「くろちゃんだよ(笑)」
冷たい取っ手をスライドさせれば、久しぶりに見えた笑顔が、
ずいぶん痩せちゃったな、なんて。
悲しくなる気持ちには気付かないフリをして、そっと近付いたベッドの上。
「バレンタインなのに何してんの(笑)」
「うるさいな、いいでしょ！べつに！(笑)」
持ってきた荷物を起きながら、ベッドの横に置いてあった椅子に腰かければ、
大きな目をきゅっと細めて笑うひらつに、久しぶり、って、
「あー、…Aは、元気にしてる？」
「…んなわけないじゃん」
「そっか…」
あれから時々会うAちゃんは、いつも悲しそうで、寂しそうで、
ひらつの隣で笑ってた頃とは大違いだよ。
「…ほんとに、もう会わないの？」
「うん。だって、わかってるのに酷でしょ。俺はいいよ？置いてく側だから。でもAは？…多分、一生悲しませる…だからいいの」
「そっ、か…」
窓の外を眺める横顔は青白くて、小さく震える拳が痛い。
こんな時、友達のくせに、何ひとつ上手く返せない自分にちょっぴり腹が立つ。
ぎゅっと唇を噛み締めれば、で？どうしたの？なんて、点滴に繋がれた細い腕が伸びてきて、肩を落とした俺の腕をポンポンって叩いた
「…バレンタイン、だから」
「ん？」
「Aちゃん、…平塚くんにあげたかったんだ、って…」
鞄の中に大事にしまってた小さな紙袋。
取り出してひらつに差し出した俺に、大きく見開いた目がキョロキョロと動いて、
「かわりにもらってあげるって、もらってきちゃった(笑)」
「…ばかじゃん」
「よかったじゃん、バレンタイン、チョコもらえて」
紙袋の口を広げて中を覗き込んだひらつが、顔をくしゃってして、
大きな瞳に涙が溜まっていくのを直視出来なくて、思わず俯いたまま口元だけは必死で笑顔を作った。
「手作りだって、うらやまし」
「うるさ(笑)」
ゴソゴソ取り出したそれは、可愛くラッピングされたチョコレートと、小さなテディベアのぬいぐるみ。
ちっちゃいそれが胸元でぎゅっと抱えるハートマークの中にはだいすき、なんて。
くしゃってそれを握り締めたひらつの手が小刻みに震えてた。
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アオ(プロフ) - 夜月さん» コメントありがとうございます！何度も読み返していただけているとは！とても嬉しいです(*^^*)作者も矢花くん大好きなので、これからも更新がんばります！ (2021年9月16日 15時) (
レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - S_uchimura**さん» お久しぶりでございます！私の方こそだいぶお久しぶりになってしまい申し訳ございません( ; _ ; )もうお話も見ていないかもしれませんが、読者様からのコメントにはいつも元気をもらっておりました。ありがとうございます( ; _ ; ) (2021年9月16日 15時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - りりさん» コメントありがとうございます！そんな風におっしゃっていただけて光栄でございます( ; _ ; )作者も矢花くん大好きなのでこれからも更新がんばりますね。 (2021年9月16日 14時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
夜月(プロフ) - アオさんの書く矢花くんかっこよすぎます！大好きすぎて何回も読み返してます笑更新頑張ってください！！ (2021年6月13日 3時) (レス) id: 0f8f64375a (このIDを非表示/違反報告)
S_uchimura** - アオさーん！お久しぶりです、覚えておられますか？？長らく顔出せなくて申し訳ないです(汗)アオさん、うっちーくんお好きですねいや私も大好きなんですけど、アオさんの書くうっちーくんのお話が大好きすぎるんです、、これからたくさん顔出すので、楽しみにしてます (2021年4月16日 22時) (レス) id: 33c3e53d29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオ
| 作成日時：2021年1月28日 0時
