揺蕩う

一生抜け出せない ページ15

バナさんと何があったかなんて実際知らないし、何かを見たわけでも聞いた訳でもないけど、

ライブ中のこいつの顔も、普段の雰囲気も、何かが変わったのは確かだったし、

彼女がバナさんと戻ってからのこいつの姿を見ていれば、何があったかなんて一目瞭然だ。


二十歳超えたいい大人がさ、どうしたの？なんて聞いた所で野暮ったいし

そんなんした所で何か変わるんだろうか、なんて思ったりして



「…ねぇ」


「なに」


「俺はさ、お前の友達なわけよ。」


心配だからちゃんとして、とか
自分を安売りすんな、だとか
奏との関係は今すぐ辞めなさい、とか

いろんな言葉が頭を過ぎったけど、



「…俺は、お前のことそういう風に出来ない。慰めてあげれない。」


「ばぁか…」


「お酒なら付き合うからさ。だから、」



お願いだから、頼むから、そんな姿誰にも見せないで。



俺はお前の友達だから、お前は俺の友達だから、

そうやって泣いて、ボロボロになるとこ、見たくないし、知りたくないんだ。



奏もそうだけど、身体で埋められる寂しさなんて、一瞬でしかなくて、
そうすることでしか自分を保てないなんて、悲しすぎる。


奏もさ、こいつもさ、頭悪いんだよ、ほんと。
そんなことしてたって、そこからは一生抜け出せないのに。

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