【TOKAI】無敵【YUYAMI】

29 ページ32

笑顔を崩さないところが、いつものAらしいなと思った。酔っていても、そういうところは変わらないんだね。





「わたしね〜、大学 途中で辞めたのは有名だと思うんだけど」

「てつやくんと一緒だね」

「そうだねえまさに。YouTubeとデザインでとりあえずは生きていけるって思ったもんなあ」

「うん」

「で、まあ学生だから、ばかじゃん。ノリで生きてるじゃん」

「うーん、まあ」

「わたし、わりと純粋だったし、ぜーんぜんモテなかったから、イケメンに誘惑されてふらっと行っちゃったんだよ」

「え！！？」

「そんな驚く？」




ガードが固い、隙がない、モテる。
それが今のAである。
真逆だ。ふらっといく、なんて 想像もできない。



「先輩だったんだけど、んー、Aちゃんかわいいね、好きになっちゃうよなんて1ヶ月くらい言われ続けて、さらには私がめちゃくちゃ好きな顔だったんだよ、そりゃあ落ちるよね」

「落ちたんだ」

「うん、すきになっちゃった」

「…」

「すきです先輩、付き合ってくださいって言ったら、どうなったとおもう？」




そりゃ、付き合ったんでしょ。そう言う前に、Aがあまりにも悲しそうな顔をするから、違う、これは正解じゃない、と分かる。




「ごめんAちゃん、やっぱり君とはむりだって、振られちゃった。そのすぐあとに、元カノとより戻してやんの、そいつ」

「うわ、サイテー」

「そうだよね〜話だけ聞くとホントにひどい」






でも、だいすきになっちゃったからさあ。少し伏し目がちに、ゆっくりと口を動かすA。


いいひとだったんだよ、すこし幼かったけど、でもね、ほんとうにAちゃんのことはすきだったって言ってくれた、その上で、でも忙しくて好きなことにまっすぐなきみとやっていける自信がないって、言われちゃった、ごめんね、自分はくずだから、Aちゃんのこと、だめにしちゃうって、


今にも泣きそうな顔でぽつぽつと言葉を落としていくA。

他人の俺からすれば、そんな男だめになってよかったと言えるんだろうけど、Aはそういうことは散々言われ続けて、ここにいるんだろうなと思った。


「すきだから、ぜったいだめになんかならないって言ってやればよかったのに、わたし、言えなかったんだあ」

30→←28（Ｃ side）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す