・ ページ48
『それでもそう望んだのは私です。』
泣いていた癖に私をじっと見る彼女の目は私には眩しい。
『好きにすれば。』
この世界で生きていて初めて動揺した私は、そのときサエカからすぐ離れたのだ。
撮影期間中、ずっと私に着いて回っていたサエカ。
あの日以来涙は流していなくて、私が見る限りずっと笑っていた。
いままでの人たちは私の機嫌を取ろうと必死だった。何かを買ってきたり、面白くもない話を私に聞かせていた。
だからこそ余計にサエカが不思議だった。
『今日で撮影終わりですね。』
寂しいな、と話すサエカ。
サエカはもう私の本性が分かっているはずだけど、何も言葉を返さない私の横でひたすら話していた。
だからこそ、だったんだろう。
『連絡先、教えて…ください。』
自分からこんなことを言ったのは。
俯いたままサエカの反応を待っていると、サエカはぜひ！と大きな声で返してくれた。
女優を初めてから、初めて感じた気持ち。
じんわりと温かくなっているこの感覚には、どうにも慣れなかった。
『ねえ、A！私、舞台の上に立ってるAが一番輝いてるって思うの！』
『Aの演技は世界で1番すごいよ！』
いつだって真っすぐな言葉で私を褒めてくれた。
芝居以外のオファーを頑なに断る私に、色んなことをやってみて気づくこともあるんだよと言ってくれたのはサエカ。
サエカは爆発的に売れた訳じゃなかった。
目の前にある小さな仕事をこつこつとこなしていた。それが楽しいと、笑っていたサエカ。
TVに映らないような裏の事情まで知っていた私は、純粋なサエカを守りたいと思った。
ただ一人、私を女優ではなく友人として見てくれるサエカを。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2494人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミスト(プロフ) - めちゃんさん» コメントありがとうございます。返信遅くなってしまい、すみません。他担の方にも楽しんでいただけてとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年8月23日 21時) (
レス) id: 8f2ed3f874 (このIDを非表示/違反報告)
ミスト(プロフ) - くま。さん» コメントありがとうございます。返信遅くなってしまい、すみません。ご心配ありがとうございます！頑張ります！ (2020年8月23日 21時) (レス) id: 8f2ed3f874 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃん(プロフ) - いつも更新有難うございます。スト担じゃない私ですが、面白いと思います！体調には気を付けてくださいね〜！！ (2020年8月19日 22時) (レス) id: 0e3b0babab (このIDを非表示/違反報告)
くま。 - 沢山更新されていて嬉しいです！でも無理なさらないでください！！これからも楽しみにしてます(^-^) (2020年8月18日 20時) (レス) id: 8ad60fd805 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミスト | 作成日時：2020年8月16日 0時
