○ ページ50
体力も底を尽きた。もう走れない。
連絡をしようにも利き手を怪我したから、上手く文字が打てない。
「…もういいや。」
スマホを胸ポケットにしまう。
そしてそっと目を閉じた。
がむしゃらに走ってきたせいでここがどこなのかもきちんと認識していない。
誰か探しに来てくれないかな、って贅沢なことを願ってみる。
「見つけた…！！」
疲れすぎて、幻聴が聞こえ始めたのか。
大好きな彼の声が聞こえた気がする。
「うわ、めっちゃ怪我してんじゃん！
A？大丈夫…じゃないか、」
両肩に手が乗り、軽く揺すられる。
閉じていた目をゆっくり開けると、見たことないくらい焦った顔をしたジェシーくんがいた。
夢？現実？あれ、私…あれ、
「目も腫れてるし、泣いてたでしょ。
涙の跡がすごいよ。」
「本物…？」
「なに、頭でも打ったの？大丈夫？」
いつものおちゃらけた彼ではなく、真剣な眼差しを私に向けていた。
他に怪我をしているところはないか、気分は悪くないか、たくさんの質問を私にしてきた。
「ちょ、ちょっと待って、ジェシーくん、」
「なに？」
「何で、ここに…？」
よく見れば彼は制服ではなく部活のジャージを着ていた。
時間なんて気にしていなかったけど、彼がここにいるってことは部活も終わったということ。
てことは、大分時間が経ってしまっているんだろう。
「ごめんね、ジェシーくん。」
心配をかけてはダメだと、私は笑った。
それに比例するように彼の顔は不機嫌になった。
「謝らないでよ。Aは悪くないでしょ。」
「え？」
「詳しい事情は分からないけど、Aは悪いことするような人じゃないって俺は一番わかってるから。」
ジェシーくんの白くて長い手が、私の首と膝裏に回る。
そして次の瞬間、ふわっと体が浮いた。
「…え。ジェシーくん！」
「暴れないで。その怪我じゃ歩けないでしょ。」
ジェシーくんの言う通り、恐らく私は歩けと言われても歩けないと思う。
けど、これは流石に恥ずかしすぎる。
「俺、何があったかは聞かないよ。
だけど、俺は何があってもAの味方だから。それは忘れないでね。」
前を向いて歩くジェシーくん。
だけどその耳はほんのりと赤く染っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 455人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るん(プロフ) - コメント失礼します。すごく好きな作品です！更新楽しみにしてます！！ (2020年4月26日 23時) (
レス) id: 41fb097b0e (このIDを非表示/違反報告)
ミスト(プロフ) - meggieさん» ありがとうございます！私もこんなお兄ちゃん欲しかったです(泣) (2020年4月19日 1時) (レス) id: 7c4afbf00c (このIDを非表示/違反報告)
meggie(プロフ) - お疲れ様です！私も北斗くんのような兄が欲しかったです！妹想いだけど、ツンデレなところがすごく好きです。 (2020年3月25日 14時) (レス) id: 4d00454950 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミスト | 作成日時：2020年3月11日 21時
