シン友 third (ページ9)

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○ ページ9

俺の言葉に、Aはこくんと頷いた。

「…教室に荷物を取りに行ったの。
そしたらそこに友だちが残っててね。私の話してた。
その子、慎太郎くんが好きなんだって。
私と友だちになったのは、慎太郎くんに近づくためだって、言ってた。」

「そんな、」

「馬鹿だよねえ。
ずっと信じてさ、私あのとき学んだはずなのにね。」

『…優吾く、助けて…っ』

フラッシュバックするあの日の光景。

地面に打ち付ける雨。

傷だらけのA。

ボロボロになった服。

不揃いに切られた真っ黒な髪。

俺に助けを求めたAを背負い、一緒に雨に打たれながら帰ったあの日のことを思い出した。

いまでも許せないあいつのことを、頭を振って消し去りAを見た。

「…辛かったな。」

「慎太郎くんとジェシーくんはその子と仲良しだから、言えなくって。」

三角座りをして、手に顔を埋めたAはちらりと俺を見つめたAに俺はなんと返したらいいのだろうか。

適当な言葉が見つからなくて、海の音がやけに大きく聞こえる。

「…もう関わんな、そんな奴と。」

「そんな態度、取れないよ。ジェシーくんも慎太郎くんもいるんだよ？」

「は？そんなこと言ってる場合かよ。」

「優吾くん。」

まっすぐ俺を見つめる、この目に弱い。

「私は大丈夫だから。」

「…無理すんなよ。」

「もし、私がいっぱいになったときは優吾くんに頼るから。いいでしょ？」

「ふはっ、任せとけ。」