シン友 third (ページ6)

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役目とバイクページ6

side Yugo

誰も何も聞かなかった。

否、聞かない方がいいと全員が判断していた。

見ているだけで痛々しい怪我のことも、リュックを持っていないことも、涙の跡があることも。

「大我ー、締め作業してくれる？」

「んー。」

いつもなら面倒くさいだの、こーちがやれよだの反抗してくる坊ちゃんもいまから俺がしようとしていることを察して何も言わなかった。

聞かない方がいいと言うけれど、結局は誰かが聞かなければ何も解決しない。

俺はエプロンを外し、近くの椅子に掛けるとバイクのキーを掴んだ。

辛いことがあったなら、2人で分け合えばいい。

誰かが一緒に背負うならば悲しみも苦しみも半分になるだろう。

「A、おいで。」

薄茶色の大きな目をぱちぱちと瞬かせ、Aは俺に着いてきた。

「…優吾くん？」

「ちょっと出ようか。」

裏の車庫まで2人で歩き、ヘルメットを渡せばAの目はキラキラと輝いた。

『私、優吾くんのバイク乗るの大好き！』

何年か前にAが言ってくれた言葉を思い出す。

俺がAに会いにいくと、必ず北斗がいたし、いまでは会うタイミングがカフェしかないから余計に2人になることがなかった。

だから2人になりたいときは決まってバイクで少し遠くに出かけていた。