コードキャスターざくろ【版権オリジナル】 (ページ3)

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端末展開ページ3

危うくクラッシュしそうになっていた体勢を、よろめきながらも何とか立て直し旋回に成功した。

｢ッしゃぁ!!!｣

元来た道をトルク任せにごりごりと駆け上がろうとするじゃじゃ馬車両に、榴は勝ち誇った笑みを浮かべてトップギアまでシフトチェンジを施した。

原付でも自転車でも、6速で登り坂に挑めばどうなるか、想像にかたくない。

愛車の泣き叫ぶようなフルスロットルのエンジン音は登り坂によって生じる抵抗により徐々に弛緩し、そして完全に停止した。

｢これはファインプレーやったなぁ、ざくろ!｣

リュックサックから卵型のボールが飛び出す。灰色のボディにはヒビが入っており、その隙間から目玉や三本指の足、そして一対の翼がのぞいている。

｢これは輌のカードやと思う。ざくろのバイクに取り憑いて悪さしよったんやわ｣
｢いや死ぬわ！｣

エンジンが止まった後も触ってもいないのにキュルキュルとセルモーターを回す音が響く。往生際の悪いイタズラの主だが、残念ながらクラッチを繋いだままではエンジンが掛かるわけがない。
榴が鈍く痛む足を庇いながらバイクを降りる。

するとバイクから煙のような光がたち昇り空中で形を為した。

｢これが、タロウカード……｣

堅牢な脚をもつ戦車のような蟹の精霊が姿を現した。

｢ざくろ、捕まえるチャンス!!｣

灰色のボールに促されて榴はライダースジャケットの懐から大きめの印籠(いんろう)を取り出す。

《土(ひじ)の力を秘めし珠よ》

印籠の根付(ねつけ)になっている翡翠色の宝玉を手に榴は呪文を唱え始める。

《真の姿を我が前に示せ。契約の名のもと、ざくろが命じる。端末展開(ディコンプレス)!》

翡翠色の宝珠は光に包まれながら十挺(じって)へと姿を変貌させた。

《我が従者となりその力を貸し与えよ、タロウカード!!》

バイクを操っていた蟹型の精霊に十挺をかざす。淡い橙黄色の光を発しながら蟹はICカード大の小さなピースの形に収束した。