検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:781 hit

絶叫大爆走 ページ1

「いやあああああああああああああ!!」

少女、(ざくろ)の深刻な悲鳴は草木も眠る深夜の峠道にこだました。

その叫びをかき消すように鳴り響く甲高いエンジン音。これが悲劇の原因だった。

安石(やすいし)榴はこの春高校を卒業した18歳。趣味はバイクに乗ること。在学中にこっそり原付免許を取って以来、バイクに跨り誰もいない自然にあふれた峠を走るのは彼女のささやかな楽しみだった。
深蒼のなめらかボディと可愛げのあるまんまるヘッドライト。見た目はクラッシックで美しく、性能は慎ましくも排気量50cc以下の原動機付自転車。ただしパワーはあるが燃費は悪い(ツーストローク)エンジン、そして操作が面倒だが自在に操れる変速機(マニュアルトランスミッション)のいわゆるミニバイクというやつだ。とりわけ榴の愛車は「元祖、100キロ出る原付」として名高い車種であった。この無駄に高い走行性能が仇になろうとは。

「止まってええええええええ!!!」

軽く力強いエンジン音と共に爆速で峠を走り抜けるバイクと黒いライダースジャケットに身を包んだドライバーの榴。整備万全だったはずが何故か突然ブレーキが効かなくなり、峠を意図せぬ速さで下っている。ブレーキ類が熱を持ち過ぎた、という問題ではない。ブレーキレバーもブレーキペダルもまるで凍り付いたかのように固まって動かなくなったのだ。鍵も同様だった。
ギア操作で無理やりエンジンブレーキをかけようとしたが、どういう訳かシフトダウンする毎にアクセルを捻ってもいないのにエンジンの回転数が跳ね上がるという怪奇現象が起こる上、ローギアにもニュートラルにも入らない。下り坂というのもあって止まることが出来ずにいた。

「ざくろ! こいつはもしかするともしかするかもしれへん!!」

背負ったリュックサックの中から響く硬質な声に榴は苛立ち混じりに叫ぶ。

「端的に言え!!」
「タロウカードかもしれん!」
夛琅(たろう)兄さんの馬鹿あぁぁぁぁ!!!」

信地旋回→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:東天紅こけ子 | 作成日時:2021年6月22日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。