イケメンヨジャアーティストの正体２ (ページ37)

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しばらくすると、来訪を告げるベルがなった。
耳触りのいいその音にドキッとし、考えるよりも先に小走りで玄関に向かう。
扉を開けると、帽子とマスクでほとんど顔が隠れているけど可愛らしいまんまるの瞳が私を捉えて、きゅうっと細くなった。
挨拶もそこそこに玄関ホールに足を踏み入れたテヨン。
後ろ手に鍵を閉めるとはぁ、と息を吐いた。

「ほんものだ〜…Aだ〜…」
『なにそれ笑テヨン久しぶりだね。おつかれさま』
「うん久しぶり、」

そういうと私の腕を取り引き寄せて、力一杯抱きしめた。
夏特有の湿った雨上がりのような匂いと共に鼻をくすぐるのはいつもの香水と少しの汗の匂い。私も抱きしめ返すと、彼の鼻筋が耳裏辺りに当たるのを感じた。

「やっと会えた…」
『最近忙しかったもんね、』
「…Aも会いたかった？」
『ふふ、当たり前でしょ？私も会いたかったよ、テヨン』

私がそういうと、びっくりした顔でパッと体を離し、目をうるうるさせて「う"〜」と奇声をあげて一際抱き締める力を強くした。
そのまま好きにさせてると満足したのか、ニコニコして私の手を引いて(私の家だけど)勝手知ったるという感じでキッチンへズンズンと向かう。

『なんか楽しそうだね』
「ふふん、今日はね、ご馳走作るよ！」
『え、なになに〜』

じゃじゃーん！と可愛い顔をしてスーパーの紙袋から取り出したのは韓牛だった。おや、これはもしかして…

『ねぇこれ、この間の動画のリベンジ？笑』
「わぁ、みてたの？あれは焼きすぎちゃったからさ、家で何回か練習したの。」
『あれも美味しそうだったけど』
「わかってないなぁA、プロたるもの常に高みを目指さなきゃ」
『プロ？笑』

意気揚々と肉を焼くアイドルシェフを横目に、先ほど作りかけてたワカモレに手をかける。
こうやって2人並んでキッチンに立つと思い出すのは実家の両親。
いつも並んで仲良くご飯を作ってて、それをテヒョンと真似したなぁ。まだ小さかったわたしたちはおままごとのキッチンセットで。

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