︎♥︎ 8 ページ8
とん、と背中に何かが当たる感覚で瞼が開く。
映るのはピンクの髪。
あれ。さっきまで車の中に居たはずなのに。
『おかえりなさいませ。お嬢様』
｢ただいま、阿部さんは…？｣
『お嬢様を送られて、今帰られましたよ』
｢ありゃー…寝ちゃったか｣
『…楽しかったですか？』
｢うん、すごい楽しかった。写真もいっぱい撮ったよ、
佐久間に見せようと思って｣
私の座るベッドに佐久間を手招きする。
1歩近づいた彼は立ったまま携帯を覗くから、
とんとん自分の隣を叩いた。
お座り！と言うと遠慮がちにベッドギリギリに座った佐久間。
｢そんなんじゃ落ちるよ｣
『主のベッドに座るなんて有り得ないことなのでこれでいいんです』
｢私の気が散るからだめ｣
よいしょ、と力を込めて腕を引っ張るも
意外と鍛えてある佐久間の体は動かない。
くそ、阿部さんより小さいくせに。
引っ張ってるのに私の体の方が動くの、むかつく。
『お嬢様。俺も男ですので誘惑はやめてください』
｢誘惑なんかしてない｣
『……ご自分のベッドに俺を座らせるのが
誘惑じゃなくて何なんです？
天然でやってるなら相当危ないですよ。
俺以外にはされませんよう。男は単純ですので勘違い致します』
真剣な瞳の奥に少しだけ色気を感じた。
そんな顔、見たことない。
街中を佐久間と歩いた時、似たような顔をした
すれ違う男性に見られたことがある。
その時は佐久間が壁となってシャットアウトされた。
今、私たちの間に壁は無い。
『…それとも俺は誘惑に負けてもいいですか？』
暖かい手が、携帯を持つ私の手を包んだ。
今日繋いだ阿部さんの手とはまた違う感触。
｢佐久間。触っていいなんて言ってない｣
『……失礼しました』
すぐに離れた手が、もの寂しく感じる。
立ち上がった佐久間は一礼して
無礼をお許しくださいと背を向けた。
そのまま部屋を出ていこうとする。
｢佐久間は、私が誘惑すればその気になるの？｣
足がぴたり、止まる。
振り返らないまま答えた。
『…男ですので』
だったら私じゃなくても女ならその気になるんだね。
なんかちょっと、胸の辺りがチクチクする。
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カジャ(プロフ) - なべさん» 大変嬉しいコメントありがとうございます。もう少しお付き合いください。 (3月13日 18時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。 前作の縁‐YUAN‐から読ませていただいてます。 とても素敵なお話だな、と思いながら…今後も更新楽しみにしています。 (3月13日 3時) (レス) @page26 id: d14fd2bd0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年3月2日 18時
