♠ 30 ページ30
会場は惨劇と言ってよかった。
君のご両親も
俺の両親も
招かれた関係者各位も
…君の同級生の目黒くんも。
さっきまでここに居た君が
もうこの会場のどこにも居ないのがなかなか信じられなくて
全フロアを見て回ったけれどやっぱり君はいなかった。
あの桃色の髪の執事が、ただの執事としてだけの感情で
接しているように見えなかったのは事実。
ご両親が気づいていたのかは知らない。
だけどこの事実を、もっと重く受け止めておくべきだった。
怒鳴り声は全て君の両親に向けられている。
育て方が悪いとか、あんな執事をずっと雇っていたなんてとか
思いつく限りの罵倒を並べて
俺の両親は俺の事を思っている振りをする。
平謝りするお父さんの横で
SPに君たちを探す手配を施すお母さん。
もういいですと言ってあげるべきなんだと思う。
本当に君のことを想うなら、解放してあげるべきなんだと思う。
あの執事と生きることを選んだのはきっと彼女自身だから。
俺は君の気持ちがよく分かるんだ。
ずっと押さえつけられて
親の望むように人生を生きてきて
自由に飢えるその気持ちが。
でもね。
『まだ見つからないんですか？』
君のお父さんが少しだけ救われたような顔をして頭を上げた。
反対に俺の父はありえないとでも言うみたいに俺を睨む。
｢ 何言ってるんだ亮平！お前から逃げたんだぞあの女！！ ｣
自分が相手の女性を勝手に決めて、勝手に結婚することを
決めたくせに、今度は結婚するなっていうのか。
何とも思わない人だったなら、それでもよかった。
『逃がさなければいいだろ』
ちゃんと、好きになったんだ。
世間のことを何も知らない君は可愛くて
俺が全部教えてあげたいと思った。
君とデートするのは楽しかった。
君と会う度、未来が楽しみになった。
だからごめん。
そう簡単には離してあげられない。
『…執事が唆して無理やり連れ去ったのかもしれない。
電話するのはAさんではなく、執事にかけてください』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 222人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カジャ(プロフ) - なべさん» 大変嬉しいコメントありがとうございます。もう少しお付き合いください。 (3月13日 18時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。 前作の縁‐YUAN‐から読ませていただいてます。 とても素敵なお話だな、と思いながら…今後も更新楽しみにしています。 (3月13日 3時) (レス) @page26 id: d14fd2bd0e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カジャ
| 作成日時：2024年3月2日 18時
