︎♥︎ 27 ページ27
万が一のことを考えて
車は離れたところに停めたらしい。
早く安心したかった。
もう大丈夫だと思えるところまで行きたかった。
それと同時に、今ならまだ間に合うと思う気持ちも拭えない。
『…ちょっと急ごっか』
｢バレた？｣
『居なくなったことに気づいてる。
監視カメラ見られんの時間の問題』
なんで分かるの、という言葉は隣を見て口にせずとも分かった。
佐久間の耳に嵌められてるのは会場内で漆黒のスーツを
着た人達がつけていたのと同じもの。
…誰かから取ったのか。
それとも盗んだのか。
一体どうやって。
『あー、思ったより早いな』
佐久間の足取りが早くなる。
車まであとどのぐらいかも分からず
ギラついた目を横目に見ながら、ほぼ走っていた。
冷える夜を必死に駆けて、見慣れた車が見えたのは
空き地の前だった。
もう執事は卒業したはずなのに、最初に助手席を開けてくれる。
ドレスを持ち上げて乗り込めば丁寧に閉めてくれた。
自分が乗る運転席はこれでもかというほど乱雑な動作で乗り込んで
忙しなくエンジンをかけた。
『ごめん、ちょっと運転荒いかも』
｢大丈夫？｣
『当たり前。やっと手に入ったんだから。絶対離さない』
タキシードのジャケットを肩にかけてくれる。
焦ってるみたいなのに、唇にキスが落とされた。
『世界一綺麗だよ』
そんな歯の浮くセリフもなぜか
佐久間なら嫌な気が全くしない。
シートベルトをしたら、ぎゅっと手が握られた。
その手が少し震えていた。
動き出した車はもう行き先が決まってるみたいに
迷うことなく進んでいく。
景色がどんどん流れて、そのうち何も見えなくなった。
直線や曲線の光が窓に映る。
あの中で、阿部さんたちは。
『あはは、あたふたしてんな』
｢まだそれ聞こえるの？｣
『うん。旦那様と奥様が俺のこと怒鳴ってる』
｢…もう佐久間と一緒にいるの知られてるんだ｣
さすがだな。
自分の人形たちへの執着。
押さえつけてきたのはそっちなんだ。
阿部さんは何も悪くは無いし申し訳ないけれど
思い知ればいい。
私はもう、レールは歩かない。
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カジャ(プロフ) - なべさん» 大変嬉しいコメントありがとうございます。もう少しお付き合いください。 (3月13日 18時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。 前作の縁‐YUAN‐から読ませていただいてます。 とても素敵なお話だな、と思いながら…今後も更新楽しみにしています。 (3月13日 3時) (レス) @page26 id: d14fd2bd0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年3月2日 18時
