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♥︎ 22 ページ22

深緑のフィッシュテイルドレス。
阿部さんのために選んだもの。



インターホンが鳴って
佐久間が何も言わず見送りにきた。



『お気をつけて』


「…うん」



扉を開ければ、こちらも正装した婚約者。
いつも浮かべている笑顔は固まって
たちまち上がる口角を手で覆う。



「お待たせしてすみません。お車、ありがとうございます」


『待って…ちょっと待って、パニック』


「どうされましたか?具合でも…」


『違う。可愛すぎる。なんで?緑、俺のため?』



後ろで静かに扉が閉まった。
佐久間、どんな顔してたのかな。



「緑が、お好きな色だとお伺いしましたので。
…違和感はないでしょうか」


『ないよ!似合ってる。可愛い、心臓痛い』



そんなに喜んでくれるとは思わなかった。
車に乗っても赤信号になる度じーっと見られるから
くすぐったくてそっぽを向く。



『でも、ひとつ懸念点はそれだね』


「懸念点…?」


『肩出てるから、だめ。他の人が見るじゃん』



会場に着いて車が止まる。
阿部さんは後部座席に手を伸ばしてジャケットを取った。



他の人が見る。
それは多分肩が出てなくても
私たちが主役だからそうだと思うけど…



『これ羽織ってて』



渡されたジャケットからは阿部さんの香りがした。
先に車を降りて、助手席の扉を開けてくれるいつもの仕草。



手を差し伸べてくれるから、そっと私の手を乗せる。
ヒールを履いていても身長差がある阿部さんに
そのままグッと引っ張られて密着した。



『今日は、こうね』



優しく回った腕が私の腰を抱く。



今度は私が待ってと言う番だった。
こんなの、恥ずかしすぎる。歩けない。



『やだ?』


「は、恥ずかしいですさすがに」


『あは笑 可愛い〜、じゃあ余計ぎゅってしちゃう』



ちょっと待ってほんとに無理だこれは。
どうにかして離れようとするけど
華奢なくせに力が強くて離れない!



助けて佐久間。

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カジャ(プロフ) - なべさん» 大変嬉しいコメントありがとうございます。もう少しお付き合いください。 (3月13日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。 前作の縁‐YUAN‐から読ませていただいてます。 とても素敵なお話だな、と思いながら…今後も更新楽しみにしています。 (3月13日 3時) (レス) @page26 id: d14fd2bd0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作成日時:2024年3月2日 18時

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