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私より佐久間がはしゃいでいるのはどうして。
これとこれとこれとってバーゲンセールみたいに
いっぱい手に持って渡してくるけど
そんなに着れません。
｢ねぇ、もうちょっと絞ってから渡してよ｣
『だって全部お嬢様に似合いますよ！』
試着室に押し込められては出て見せて、
佐久間の喜んでる顔を見て
はい次はこれで！とモデルのように早着替えを迫られる。
褒めてくれるのは嬉しい。
が、どんどん体力がなくなっていく。
｢佐久間、ほんとに絞って。こんなに着てたら日付変わる｣
ドレスなんて着たくないから皆一緒に見える。
黒色ならなんでもいい。
何着目かのドレスを着ていると
携帯が通知を告げた。
母親からだった。
…阿部さんは緑が好きらしい、と。
今着ているのは黒。
その次に着ようとしているのも黒。
白やピンクじゃないだけマシかと思うべきか
カラードレスなんてありえないと押し通しても良いか。
試着が終わり、ずっと目を輝かせている佐久間に
その通知を見せた。
すっと翳った瞳が、重くため息を吐く。
『緑ですか…』
｢一応合わせた方がいいよね｣
『通知を見なかったことにも出来ますが、
そうしたら後々また怒られるでしょうね』
だよね…と私も重いため息を吐いた。
婚約者の好みに合わせることも躊躇うような女など
向こうだって願い下げだろうな。
結局逆らえず、深緑のフィッシュテイルドレスを
苦難の思いでチョイス。
オフショルダーで肩は出るが、それ以外に露出は少ない。
阿部さんが喜ぶ保証などどこにもないのに
まるで健気な乙女だ。
｢佐久間だったら、嬉しい？｣
日の暮れかけた車内で
エンジンをかけた佐久間に聞く。
『何がです？』
｢婚約者が自分の好きな色のドレス着てたら、
好きじゃなくても嬉しいのかな｣
『…好きじゃない人なら、どうでしょうね。
俺は何も思わないかもしれません』
｢そうだよね｣
『ただ、その相手がお嬢様なら嬉しいです』
チラッとこっちを見た佐久間。
『…お嬢様が俺のために、嫌いなピンクを着てくれたら
それだけで胸がいっぱいになります』
薄い薄い壁1枚。
それだけを破らないようどうにか隔てて
見ないふりして。
高鳴った心臓にも、気付かないふり。
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カジャ(プロフ) - なべさん» 大変嬉しいコメントありがとうございます。もう少しお付き合いください。 (3月13日 18時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。 前作の縁‐YUAN‐から読ませていただいてます。 とても素敵なお話だな、と思いながら…今後も更新楽しみにしています。 (3月13日 3時) (レス) @page26 id: d14fd2bd0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年3月2日 18時
