︎♥︎ 11 ページ11
その夜。
懲りもせず佐久間を部屋に呼び出した。
以前はどの時間に呼び出しても格好はどうであれ笑顔だった。
なのに今日はまだ執事服のままだし、表情はやっぱり固い。
『どうされましたか？』
ただの執事になろうとしている。
そんな気がした。
｢…阿部さんが、結婚式の前にお披露目パーティーしたいんだって｣
『よろしいのではないでしょうか。
向こうの方々にも挨拶出来ますし』
｢佐久間。貴方本当にこれでいい？｣
『…どういう意味でしょう』
｢私と阿部さんが結婚したら
佐久間はもうここにいられないんでしょう｣
顔を上げてよ。
何を思っているのか教えてよ。
その態度のわけも。
たった3年。
されど3年。
私の一番近くに居たのはあなただった。
そして、佐久間の一番近くに居たのは私だった。
『俺が結婚しないでって言ったら、結婚しないんですか？』
握りしめた拳が震えてた。
『俺が何を言ったって未来は変わらない。
お嬢様はあいつと結婚して幸せになって
俺は旦那様の会社で役員として働く。
それ以外のルートなんて、最初からないじゃないですか』
立ったまま独り言みたいに流れてくる言葉。
私が立ち上がってもそれは止まらない。
視界に私は入らない。
『……結婚なんて、しないで。置いてかないでよ』
｢さくま｣
ピンクの髪が、彼の顔を隠す。
頬にそっと片手を添えたら
やっと彼がこちらを向いた。
｢言えるじゃん｣
『…もうしわけ、』
｢何が申し訳ないの？私が聞いたことに答えただけでしょ｣
『俺は、執事失格なんです。去年の今頃からずっと。
お嬢様をお嬢様として見れなかった』
添えた手に佐久間の手が優しく重なる。
『これでいいんです。どうせ苦しいのなら
いっそ離れてしまった方がお嬢様を忘れられます』
しっかり言葉にしなくとも
その言葉の節々から佐久間の気持ちは見えた。
18になってもほとんど男性に触れてこなかった私は
佐久間が私に持つ感覚がどのようなものか分からない。
ただ、
｢…佐久間に会えなくなるのはやだ｣
それだけは、自分の中ではっきりしていた。
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カジャ(プロフ) - なべさん» 大変嬉しいコメントありがとうございます。もう少しお付き合いください。 (3月13日 18時) (
レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
なべ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。 前作の縁‐YUAN‐から読ませていただいてます。 とても素敵なお話だな、と思いながら…今後も更新楽しみにしています。 (3月13日 3時) (レス) @page26 id: d14fd2bd0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年3月2日 18時
