保健室の渡辺先生 (ページ3)

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カウントダウンの始まりページ3

side.A

先生に一目惚れしてから何も進展しないまま受験生になってしまい、先生と離れるまでのカウントダウンが始まってしまった。

ｶﾞﾗｯ

『先生、』

渡辺
｢どうした？｣

『んーん。』

渡辺
｢ココア飲む？｣

『うん。ちょーだい。』

慣れたやり取りでいつものように先生の座る椅子の隣に腰掛ける。

カチャカチャと音を立てながら先生がココアを作る音が心地いい。

渡辺
｢しんどくなった？｣

『んー、メンタルが？』

渡辺
｢受験生だしなぁ。俺もAくらいのときしんどかったわぁ。いろいろ。｣

『でもここに来たら落ち着くんだよね。』

渡辺
｢保健室は心も体も休める場所だから。そういう場所になってくれてたら嬉しいよ。……はい。｣

『ありがと。』

コトン。と私の目の前に置かれたココア。

保健室に置かれた私専用のピンクのマグカップ。

呼び方もいつの間にかAって呼んでくれるようになって、私は敬語が無くなった。

私は特別な存在だと勝手に思ってた。

渡辺
｢あ、熱いと…｣

『あちっ』

渡辺
｢あー、遅かった。笑｣

べーと舌を出して悶絶しているとぽんとひとつ頭に手を置かれた。

『あのっ、

生徒(男)
｢せんせー！けがしたー！｣

渡辺
｢おうおう、大丈夫か。笑｣

あー、また何も言えない。
聞きたいこと、話したいこといっぱいあるのに。

もういっか。

そう思ってココアをもう一口入れて帰る準備を始める。

『あま、』

生徒(男)
｢見て！やばくね！？｣

渡辺
｢まぁーた派手にやったな。笑
手当するからそこ座れ。｣

生徒(男)
｢痛くしないでよ？｣

渡辺
｢え、無理。｣

生徒(男)
｢いっった！！｣

渡辺
｢はははっ！笑
はいっ、終わり！気をつけろよ！｣

生徒(男)
｢もう歩けねぇよ〜…｣

渡辺
｢歩いてるだろ。笑｣

怪我した生徒を見送った後、また私のとこに戻ってきてくれた先生。

渡辺
｢ごめんごめん。なんか言おうとしてたろ。｣

『ううん、大丈夫。』

渡辺
｢そっか。あれ、もう帰んの？｣

『うん、これ飲んだら帰ろうかなって。』

渡辺
｢ふーん。気をつけろよ。｣

『うん。ありがと。』

そう言って、今日も何も進展しないまま家路に着く。

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