忘れんなよ、 (ページ33)

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side.Mukai

Aが活動を再開してから3ヶ月くらいかな？経った。

これまでに何回か家に招待して色んな相談を受けてきた。
なんかジュニアの頃に戻ったみたいで、嬉しさと少しの寂しさも感じてた。

今日も、Aが家に来る。

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

向井
｢はいはーい｣

オートロックと部屋の前の２つを開けてAを迎え入れる。

『おじゃましまーす』

向井
｢どうぞー｣

『ふふっ、』

向井
｢なんやねん笑｣

『んーん、なんにも！』

向井
｢なんか慣れたな。この感じにも。｣

『…うん。』

ふと呟いた。悲しい気持ちも嬉しい気持ちものせた言葉やった。

“記憶が無いA”というのに良くも悪くも慣れてきてしまった。
世間も、俺たちも。

向井
｢ほんで？なんで今日は来たん？｣

『え、来ちゃダメなの？』

向井
｢ちゃうやん。相談かなんかしに来たんやろ？｣

『まぁ、そんなとこかな。』

向井
｢ゆっくりでええで｣

『ありがと、でもちゃんと話すね。』

向井
｢うん。｣

『私さ、なんで、みんなのこと忘れちゃったんだろうね…』

その言葉を皮切りに、大粒の涙を零しながら俺に思いの丈を訴えたAの話を、俺はただ聞くことしか出来なかった。

『なんでなの！？忘れちゃダメなはずなのに！
いちばん辛いの、翔太くんを忘れてることなの…。

翔太くんを見る度に頭がズキンって痛くなってなにか思い出しそうなの。でも思い出せなくて、絶対忘れちゃダメな人なはずなのに…。

ねぇこーちゃん、辛い。つらいよ……。』

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