身代わり 1 ページ9
ガヤガヤと酔っ払いたちの声でうるさい大衆居酒屋で、向かいの席に座るAは、男の俺でもびっくりな勢いで酒を煽った。
ドン！と高らかに音を立て、ジョッキをテーブルに叩きおく。
「…………帰って良い？」
「はぁ？！ダメに決まってるでしょ！そんなこと言わないでよ！」
「…酒癖悪い女は嫌いだよ」
「ごめんってごめんって！奢るから〜！」
「それはそれで嫌だよ…」
お酒の力が手伝ってか、泣き上戸になった同い年の友人、Aは、えぐえぐとしゃくりあげながら、泣きべそをかいて、テーブルの上にある俺の手を掴んで泣きつく。
「今をときめく売れっ子芸人つかまえてさ、愚痴ばっかりっていうのも申し訳ないと思ってるよ、本っ当に！でもさ〜、本当に酒でも飲まないとやってらんないんだって〜」
「…本当。俺が四千頭身のじゃない方で良かったな。これが拓実だったらお前文春砲で即死だよ」
「怖…てか、ばしくん相手でも怖いよ、最近女性人気すごいらしいじゃん？バシガール？だっけ？夜道には気をつけよ…刺されないように」
「…あんなの、社交辞令みたいなもんだよ」
「は〜〜〜〜〜っ、やっぱりイケメンは言うことが違いますね〜謙虚ですこと」
「…めんどくさ」
Aは酒に強い方ではない。むしろ、すぐ酔っ払って顔を真っ赤にするし、泣いたと思ったら笑ったり、こういう風にウザ絡みしてきたりもする。…思ってもないくせに。
ただ、酒を飲んだAはたしかにウザ…扱いが難しいけど、何も普段からこんな感じなわけではない。普段は温厚で、気配りもできて、人が好い。それこそ、愚痴なんて一切零さない。
だからこそ、いつも我慢して我慢していっぱいいっぱいになって…耐えきれなくなって、俺を呼んで、吐き出してるんだと思う。たぶん…
もしそうなら、そんな相手に俺を選んでくれたことは、素直に光栄だと思う。
「で？次何飲むの？」
「生…」
「…飲みすぎ。あ、すみません。シャンディガフ二つ」
「えっ、生って言ったじゃん！」
「さっきから飲みすぎ。ちょっとは休憩しなさい」
「とか言ってばしくんが好きなだけでしょそのお酒！」
「一つのテーブルで同じお酒頼んだ方が店員さんも楽に決まってんじゃん」
「たしかにそうだけど…」
最初の威勢はどこへやら。今度はすっかりしゅんとして、唇を尖らせ、こてりとテーブルに突っ伏す。
…ああ、水も一緒に頼んでおけば良かったか。
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楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます！穏やかな空気感と丁寧な描写...！具体的なお褒めの言葉ありがとうございます！描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです！これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします！ (2020年3月12日 13時) (
レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします！これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい！コメント嬉しいです！ありがとうございます！！応援もありがとうございます〜頑張りますね！！ (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です！更新頑張って下さい！ (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは！文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...！私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...！笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-） (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楪 | 作成日時：2020年2月15日 19時
