君だけを 10 ページ43
震えた肩。見えない表情。でも、きっと今、彼はひどい顔をしている。そんな顔にさせたのは、他でもない、私で……
"彼氏が優しいからって、許してもらえてると思って、なんでもかんでも甘えすぎんなよ"
…そっか。そういうことか。
私は知らず知らずのうちに
こんなに大切な人のことを追い込んでいたんだ…。
「ごめん、ごめんね…いつも遼大くん、色々許してくれるから…甘えちゃってた」
「…」
「男の人と二人きりで会うなんて、デリカシーなかったよね…」
「……」
「今度からは、ほかの友達も交えて会うようにするし、ちゃんと事前に相談もするよ」
力の弱まった遼大くんの手を解き、その首元に腕を回す。
「…ごめんね、好きだよ。ちゃんと、遼大くんのことだけが好きだから」
「…うん」
遼大くんの首元に顔をうずめて、力いっぱい、その身体を抱きしめる。遼大くんも、私も、決して口が達者な方じゃないから。せめて行動で示して、少しでも、この溢れそうな気持ちが伝われば良い。
再度、遼大くんの顔を覗けば つ、と一筋の涙が静かに頬を伝う。遼大くんは、それが恥ずかしいのか、何度も何度も袖で涙を拭いて、余計泣き顔がぐちゃぐちゃになる。案外、酔うと泣き上戸なのかもしれない。
「…ごめ、こんな……女々しい…」
「ううん…私が悪かったもん。それに…それだけ私を好きでいてくれてるってことだもんね…？」
その頬を両手で包んで、そっと唇に口付ける。
「…遼大くん、怒ってる…？」
「…なんで」
「しょっぱい涙は怒ってる涙だよ」
「…ふふ、なにそれ」
すっかり表情も声も和らいだ遼大くんは、優しく私の身体に腕を回して、包み込んでくれる。
「もう…怒ってないよ。謝ってくれたし、ちゃんと帰ってきたし。ああ、でも…」
「…？」
「……今日は、ずっとこうしてたいな」
その言葉に応えるように、きゅっと腕の力を強くする。不安に思うことなんて、一つも無い。
だってこんなにも、君だけを愛してるんだから。
END
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楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます！穏やかな空気感と丁寧な描写...！具体的なお褒めの言葉ありがとうございます！描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです！これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします！ (2020年3月12日 13時) (
レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします！これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい！コメント嬉しいです！ありがとうございます！！応援もありがとうございます〜頑張りますね！！ (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です！更新頑張って下さい！ (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは！文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...！私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...！笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-） (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楪 | 作成日時：2020年2月15日 19時
