君だけを 8 ページ41
聞きたいことはたくさんある。
「…なんでいるの?」
「いちゃ悪い?」
石橋くんは、覚束無い呂律で、ややふてぶてしく言う。いや、今のは語弊があった。
「だって石橋くん、今日遅くなるんじゃなかったの?」
「早く切り上げて帰ってきたんだよ」
「なんで?」
「心配だったから」
石橋くんは相変わらず無表情。淡々と、少し低く言い放つ。
「心配…?」
「嫌なことされたとか、一人で帰れないとか…なんかあったときに、迎えに行けるようにと思って」
まあ、結局酔っ払っちゃったんだけど。と自嘲気味に言う。
「…私の、ために…?」
「うん」
「…お酒は?だって普段飲まないのに、なんで…」
「……」
じっ と石橋くんの目を見つめれば、ふいっと逸らされる。と思えば、不意に倒れ込んでくる、石橋くん。
「わ、石橋く…」
「楽しかった?」
私の首元に顔をうずめ、ぽそりと零す。弱々しく吐息が触れて、少しくすぐったい。
「久しぶりに幼なじみに会って、かっこよくなったなとか思ったの?」
「え?」
「恋愛の話とかした?実は昔好きだったんだよとかさ」
「え、ちょ、ちょ…待って?」
おかしい。何がって、石橋くんの様子がだ。
石橋くんは、普段から決して口数が多い方ではない。それなのにこんなにまくしたてて。おまけに、私の声もまともに届いていないと思われる。
石橋くんが今どんな表情をしているか不安になって、顔を覗き込もうとしても、石橋くんは頑なに顔をあげようとしない。
「光はそんなんじゃ…」
「それ」
私の言葉を遮るように発せられた声。
「幼なじみのことは名前で呼ぶくせに、俺のことは名字」
「…あ」
「……ムカつくんだよね、それ」
次の瞬間、私の視界がぐるん と回った。
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楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます!穏やかな空気感と丁寧な描写...!具体的なお褒めの言葉ありがとうございます!描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです!これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします! (2020年3月12日 13時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします!これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい!コメント嬉しいです!ありがとうございます!!応援もありがとうございます〜頑張りますね!! (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です!更新頑張って下さい! (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは!文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...!私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...!笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-) (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楪 | 作成日時:2020年2月15日 19時