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君だけを 6 ページ39

送っていこうか?と言われたけど、さすがにそこまでしてもらうのも心苦しかったから、大丈夫だよ、と一人で帰ることにした。


「彼氏が優しいからって、許してもらえてると思って、なんでもかんでも甘えすぎんなよ」

「わかってるよ…」

「こっちは悪気ないつもりでも、いつの間にかあっちが不満溜めててサヨウナラとかザラなんだからな」

「経験者は語る…」


そうだぞ?ありがたい言葉よーく聞けよ?なんて得意になって言ってくる。いやいや、自慢にならないよそれ…


「近くにいるからって、油断して、目離すなよ」

「うん」


目なんて離さない。石橋くんはかっこいいから。モテモテだから。いつ誰に狙われているかわからないし。


「目離してると、いつの間にか手の届かない存在になっちゃったりするんだから」

「…うん」

「お前はちょっと抜けてるところあるから」

「…そんなこと言って。私の何がわかるの」

「…わかるよ」


二人とも大人になった。
ずっと変わらないと思っていたことも、少しずつ、変わっていく。


「わかるよ。ずっと…Aだけを見てたから」







お店の外に出ると、寒空が都会のネオンに霞んでいた。


「…告白されるのも、別れようって言われるのも、いっつも相手からなんだよ。俺はちゃんと、好きになってるつもりなんだけど『誰のこと考えてるの』って。変だよな」

「…うん」

「……まあ、でも」


光は、落ち込んでいた表情を半ば無理やり笑顔に変えて、寒さに鼻を赤くしながら言う。


「また彼女できたら言うわ。今度は別れないような相性バッチリの彼女」

「うん」

「そしたらダブルデートしようぜ」

「…ふふ。楽しみにしてる」


緑色のタクシーが、人混みを掻き分けるようにして、こちらにゆっくりと向かってくる。
じゃあ、私行くね。と、今日誘ってくれたことや、ご馳走してくれたこと、タクシーの手配諸々への意味を込めて、お礼を告げて、歩き出す。









「A」

「…?」


少し遠くに立つ光は、真っ直ぐに私を見ていた。
振り返った私と、佇む光の間に、少し気まずい沈黙が流れる。


「あの、さ」


ねぇ、何?と、急かせる雰囲気では、なくて。









「…結婚式」

「……へ?」

「結婚式は呼んでよ」


スピーチしてやるからさ。
屈託なく笑う光に、一瞬緊張した心がほぐれる。


「気が早いよ、馬鹿」




タクシーに乗り込んで、緩やかに発車する。
光は、姿が見えなくなるまで手を、振っていた。

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設定タグ:四千頭身 , 石橋遼大   
作品ジャンル:タレント
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(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます!穏やかな空気感と丁寧な描写...!具体的なお褒めの言葉ありがとうございます!描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです!これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします! (2020年3月12日 13時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします!これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みみっくさん» わーい!コメント嬉しいです!ありがとうございます!!応援もありがとうございます〜頑張りますね!! (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です!更新頑張って下さい! (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは!文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...!私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...!笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-) (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年2月15日 19時

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