君だけを 4 ページ37
そもそも、どうしてそんなに写真を見たがるのか。
「なんだよー、なんでダメなの?気になるじゃん、Aの付き合ってる人」
「あの…その、ちょっと…有名、な人、…だから」
「…え?まじ…?」
「……うん」
光は急にハッとしたようにして、笑顔を引っ込め、姿勢を正す。お酒で赤くなっていた顔も、みるみるうちに赤みが引いて。
「…なんか、ごめん」
「…ううん。ただ…迷惑はかけたくない、からさ」
「うん、うん…そう、だよな。うん」
またバツが悪そうな顔をして、目を伏せた光は、まるで叱られた子犬みたいにしゅん、と気を落として弱々しく笑う。
「いや、本当Aが付き合ってる人ってどんな人なんだろうって気になっちゃって。ごめん」
「良いよ、別に」
「…てか、ごめんな?」
「何が?」
光はガシガシと頭をかく。
「…俺、お前が彼氏いないもんだと決めつけてさ。男とサシで飲みに誘うとか…ちょっとデリカシーなかったわ。悪いことしたな。Aにも、彼氏にも」
「え、いや…久しぶりに会えて良かったし、知らなかったんだししょうがないよ…!」
「ううん、俺も確認すべきだったわ。いくらお前でもこの歳になれば彼氏の一人や二人いなくちゃな」
ニヤニヤと笑いながら私を小馬鹿にするその表情は、もうすっかり見慣れた幼なじみのそれ。
なにそれ、失礼すぎじゃない?と手元のドリンクを引っ掛ける勢いで噛み付けば、まあまあ落ち着けよ、と飄々とかわされる。
「…嘘だよ」
「はぁ?」
「そりゃ彼氏いるよな。A、綺麗になったもん」
「…へ」
ふっ…と真顔になった光。
え、なにそれ。なに、その顔…。
なんでちょっと泣きそうなの。
なんで何も言ってくれないの。
きゅっと引き結ばれた口元は、貝のように動かない。
なんで?
早く言ってよ、冗談だよ、って。
いつもみたいに、ブスとか、デブとか
言えば良いでしょ。
調子狂うじゃない、褒められたら。
ねぇ…
おふざけなんて一ミリもない、無表情。
真っ直ぐな、目。
不意に伸ばされた、手。
153人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます!穏やかな空気感と丁寧な描写...!具体的なお褒めの言葉ありがとうございます!描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです!これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします! (2020年3月12日 13時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします!これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい!コメント嬉しいです!ありがとうございます!!応援もありがとうございます〜頑張りますね!! (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です!更新頑張って下さい! (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは!文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...!私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...!笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-) (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:楪 | 作成日時:2020年2月15日 19時