特別な夜 8 ページ33
バフ、と布団を頭の上まで被って、二人でじゃれあう。
「ぅ、わ…A足冷た…」
「冷え性なの」
「俺があっためたげる」
石橋くんが、私の足に足を絡めてきた。
「あったかい」
「でしょ」
「やっぱり筋肉あるから体温高いのかなぁ」
「かなぁ」
仄暗い視界に、微かに石橋くんの笑い顔が浮かんで、ほっぺをつついたり、つまんだり。
「ふぁひふんほ」
「えぇ?なぁに?」
「ほへばっはひずふひ」
「ふふ、ふぁひいっへふはわふぁんはひ」
石橋くんも私のほっぺをつまんでびよんびよん伸ばす。おもちみたいだね、って笑われて、それ 褒めてる?って思う。
石橋くんのほっぺも負けず劣らずやわらかくて、すべすべで、可愛くて、夢中になって触っちゃう。
本当、可愛いなぁ。楽しい。好きだなぁ。
石橋くんはずっと微笑んで、私のほっぺを触っていて、
不意に、する…と手を滑らせ、私の…唇に触れる。
「A、」
…ずるい。
さっきまで、あんなににこにこして、可愛くて、楽しくじゃれあって、それなのに。
急にひそめられた低い声、暗くてもよくわかる真剣な眼差し。いつの間にか笑顔は消えて、代わりに真っ直ぐに私を見つめる。
石橋くんの親指の腹が、つ と私の唇を何度か往復して、ため息みたいな声で、言う。
「…綺麗、」
「…っ」
「…A、良い?」
ふに、と唇に触れる、熱を帯びた指先。
じわりじわりと、私の頬にも熱が集まってくる。
「…キス、して良い?」
言葉にするのは恥ずかしいから
精一杯の勇気を振り絞って、こくりと頷く。
次の瞬間、柔らかく触れ合った唇と唇。
ぎゅう、って 胸の奥の奥が疼くみたいに痛い。
胸いっぱいに広がる好きな人のにおい。
優しく頬に添えられた手。髪を梳く手。
あまりに柔らかい感触に、痺れるような心地良さが走って、おかしくなりそう。
「ん、っ」
鼻にかかった声が漏れて、恥ずかしくて。唇を離そうとした瞬間、抑えられる後頭部。逃げ場を失った私の唇に、食むように再度重ねられる唇。
「ん、…」
「…可愛い」
はぁ、と熱を帯びた吐息が頬を掠めて、そこから熱くとろけそう。
夜が更けてゆく。
長い長い夜はきっと、まだまだ明けない。
さっきのお返し、と言わんばかりに私に告げた石橋くんは、目を細めて、ぺろりと自身の唇を舐めた。
END
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楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます!穏やかな空気感と丁寧な描写...!具体的なお褒めの言葉ありがとうございます!描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです!これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします! (2020年3月12日 13時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします!これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい!コメント嬉しいです!ありがとうございます!!応援もありがとうございます〜頑張りますね!! (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です!更新頑張って下さい! (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは!文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...!私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...!笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-) (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楪 | 作成日時:2020年2月15日 19時