夏祭り 2 ページ19
「石橋くん！」
可愛らしい響きの声と、カランコロン、という小気味良い音にハッとして顔をあげれば、Aがこちらに手を振りながら駆け寄ってくるのが見えた。
「A」
「ごめんね、本当…待ったよね？」
「いや、全然。今来たところ」
こんな、漫画やドラマの世界でしかないと思っていた会話を、自分もする日が来るとは思わなかった。本当はめちゃくちゃ待ったけど。Aが来てくれるかどうか、不安で不安で堪らなかったけど。
でも、Aの弾けるような笑顔を見たら、そんなの全部吹き飛んだ。
「いや〜、楽しみだな〜」
「うん、そうだね」
「何食べよっかな〜」
Aは、淡い水色の浴衣を着て、長い髪を後ろでまとめている。ゆるくカーブした髪が一筋後れ毛として白いうなじに流れていて、なんか…本当…色っぽい。
なんで、こんなことになったんだっけ。
俺は、どういうわけか、密かに好意を寄せているAを、夏祭りに誘うことに成功した。
正直、笑って流されるとか、無理って言われることを覚悟していたのでかなり驚いたし…なんなら今でも夢見心地である。
こんな状況でよく誘ったな、俺…
そして、よくOKしてくれたな、A…
俺は、ふと隣に目をやって、Aの横顔を眺める。長くて上向きの睫毛、すっと通った鼻筋、ほんのり色付いた唇。
「なーにー？石橋くん」
「えっ、あ」
「そんなに見ても何も出ないよ？」
にこっと無邪気に笑うその顔を見て、あ、ハートを射貫かれるってこういうことを言うんだ とか思ったり。
はにかむとのぞく八重歯が可愛いな とか。
「……浴衣、似合ってる、ね…」
気づけばそんな言葉が口から滑り落ちていて。
Aは目を真ん丸くして、えー！と言う。
「え、え？本当？似合うかなぁ」
「うん、すごく」
「やったぁ、嬉しい！」
「………可愛い」
もちろん、浴衣姿も、無邪気に笑う、その笑顔も。全部、全部可愛い。
ああ、こんなことを言ったら引かれるだろうか
自分で言っておきながら、恥ずかしくてぶわっと熱を持った顔を見られたくなくて。俺は、手の甲で顔を隠しながらAから目を逸らす。
「…ごめん、今の、忘れて…」
「や、やだよ…せっかく石橋くんが褒めてくれたんだもん…覚えていたいよ」
「…なんで」
「だって…」
「…」
「…なんでもない！！」
Aの顔もいつの間にか真っ赤な顔をしていて。
ああ、何かの間違いで
君が俺と同じ気持ちだったりしてくれないか。
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楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます！穏やかな空気感と丁寧な描写...！具体的なお褒めの言葉ありがとうございます！描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです！これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします！ (2020年3月12日 13時) (
レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします！これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい！コメント嬉しいです！ありがとうございます！！応援もありがとうございます〜頑張りますね！！ (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です！更新頑張って下さい！ (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは！文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...！私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...！笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-） (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楪 | 作成日時：2020年2月15日 19時
