あたたかい 1 ページ2
痛い、という感情とともに意識が浮上する。閉じた瞼の隙間から感じる光はほとんどなく、頬に触れる空気もひやりと冷たい。…まだ朝早いらしい。
目を開けて、枕元にあるであろうスマホで時刻を確認しようとするも…できない。身動ぎができない。
ズシリと石のように重くお腹にのしかかる痛み、頭に襲いかかる痛みは脈打つようにリズムを刻んで、ぐるぐると体の中心を渦巻くみたいな不快感が喉元を通り過ぎて飛び出しそう。
……やばい。
…嫌な予感がする。
もしかして、この感じ…。
まさか…
でも、そんなの困る…。
…だって今日は、久しぶりにばしくんと……
頭の中で悶々と考えていると、隣にあった気配が、ガサゴソと身動きを始める。ばしくんが起きたらしい。
昨日は、ばしくんがお仕事早く終わって、すぐに私の家に来た。そして、泊まってそれで…今日、デートの予定だったのだ。
前から私が見たいと言っている映画があって、それを見に行こうってばしくんから言ってくれた。ばしくんは今じゃ売れっ子だから、人の多いところに二人で出かけることは出来ず、あえて人のいない映画館に行くためにわざわざ遠出をしなければならない、けど…
ばしくんが、私の見たがってる映画のことを覚えてくれてて、貴重なお休みを割いてわざわざ私とそれを一緒に見に行こうって言ってくれたことが嬉しくて。ずっとずっと楽しみにしてたのに…
ばしくんは普段からハードなスケジュールをこなしているせいか早起きだ。早起きをして、いつものコースをランニングしてから一日を始める。それが休日のルーティンだと言っていた。ばしくんは、私がまだ眠っていると思っているようで、そろりそろりと布団から抜け出し、物音一つ立てずに部屋から出ていく。
どうしよう…おはよう、って言った方が良いかな。それと、ちょっと体調が悪いことも……でも。
あまりの体調不良と、睡魔が拮抗していて、目を開けることも、声をあげることも叶わない。
「……A」
ばしくんの、寝起きの少し掠れた、でも優しい声。
一旦出かける準備を整えたであろうばしくんの気配がすぐそばでして、私の前髪に触れる。
「…まだ寝てるか」
ばしくんは誰に言うでもなく、ぽつり呟いて苦笑した。何度か私の前髪を撫でる手はあたたかく、さらりと前髪を掬って、少し名残惜しそうに離れた。
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楪(プロフ) - 喫茶店さん» コメントありがとうございます！穏やかな空気感と丁寧な描写...！具体的なお褒めの言葉ありがとうございます！描写はいつも気をつけている点なので特に嬉しいです！これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします！ (2020年3月12日 13時) (
レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
喫茶店 - 初めまして。穏やかな空気感と丁寧な描写が素敵ですね。もちろんドキドキします！これからも更新を楽しみにしています。 (2020年3月12日 0時) (レス) id: 6d6dcef09a (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - みみっくさん» わーい！コメント嬉しいです！ありがとうございます！！応援もありがとうございます〜頑張りますね！！ (2020年3月11日 22時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
みみっく(プロフ) - 更新頻度高いのに内容面白いしもう神です！更新頑張って下さい！ (2020年3月11日 20時) (レス) id: d5fadfa717 (このIDを非表示/違反報告)
楪(プロフ) - azuさん» azuさんこんにちは！文章の書き方褒めていただけて嬉しいです...！私が初めて見た石橋さんの小説がazuさんの小説なので光栄です...！笑 マイペースでですが、更新していけたらなと思ってます:-） (2020年2月15日 21時) (レス) id: d47ce339d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楪 | 作成日時：2020年2月15日 19時
