第231話：過去5 ページ37
ああ、怒られるんだろうか。
何をやっているんだと、こんな状況なのにと、呆れられるだろうか。
叱責は承知で切り出した話題だが、やはり心は追いついていなかったか。
なるべく早い段階に相談した方がいいだろうという判断だったのだが。
堪えるように俯けば、父はそれ以上言葉を続けない。
「………。」
「顔を上げろ」
「…ごめんなさい……………」
「それは何だ？何に対して謝っている？」
怒気を含んだその声は、Aを震わせるに十分だ。
娘は何も言葉が出ない。父は裏切られた気分なのかもしれない、と思った。
ああ、間違えた。全部間違えた。
鼻の奥が痛くなり、爪が食い込むまで手を握りしめる。
「嘘だろう」
「……え？」
その低い声に、Aはようやく顔を上げる。
父はそのしかめ顔を揺らさず、「悪いことをした娘」を睨んでいる。
嘘。
とは、どういうことか。
その言葉を反芻するより先に彼女の父は続けた。
「ならば一ヶ月前にお前から見せてもらったノートの内容や付箋の増えた参考書は嘘か？」
手の平がずきりと痛んだ。
「友達と楽しそうに大学へ行っていたのも喫茶店で友達と勉強すると言っていたのも嘘か？」
どうも、爪は手の平の皮を食い破っていたらしい。
「昔から言ってるだろう。嘘は嫌いだ。」
ああ、この目は知っている。この声も知っている。
父に嘘を吐いたことがある。
痛い程に、彼の怒りが目と耳に焼き付いた。
「倒れたからか」
「お父さん…」
「俺が倒れたからか」
「違う…違うよお父さん……」
「何が違う？お前はまた「自分のせい」にするのか？」
「……、」
「そうやって自分が不甲斐ないと言い聞かせて、誰のせいでもなく自分だけが
「…っ」
「人を馬鹿にするのも大概にしろ。なぜつまらない嘘をつく？
お前が熱心に勉強をしているのに気付いていないわけがないだろ。
いつものように馬鹿正直に本当のことを言え。
唯一の家族が倒れたことで物事に集中できない、と言え。
自分の能力不足なんかじゃない、と言え。」
喉元を刃物で貫かれた気分だ。
何も間違ってはいなかった。その言葉には「正解」しか含まれていない。
なんで分かるんだ、と、Aは絶望にも怒りにも哀しみも似た想いで胸がいっぱいになった。
勉強が追い付いていないなんて嘘だ。むしろ波に乗っている最中だった。
手の平が痛い。鼓動に合わせてずくずく波打つように熱を持っていた。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
