第226話：大丈夫 ページ32
Aの心情としては、「大丈夫の定義が分からないので何とも言えない」。
事情を解決したのか否か、という話なのなら、断じて大丈夫ではない。
まあ、いい方向に進んでるとは言い難いかなあ、なんてAは笑ってみせるが、
世良はぱっとしない表情を張り付けるばかりで、Aは首を傾げた。
「……あのさ、Aさん」
「…うん？」
「ちょっと、いい？」
■
「何故です。確かに私の独断ではあるが、彼女が居て足手まといになることはないでしょう。」
「執刀医の命令だ、あいつは手術には参加させない。」
「……。それには従いますが…。昨夜の一件ですか？」
渡海はそれこそ肯定も否定もしなかった。
真っ暗闇の瞳が高階を見据えるが、高階はそれを気味悪がったのか、
振り払うように渡海の前へ歩み出た。
「彼女と何があったんです」
「関係ないだろ」
「全体的な士気に関わります。目撃したのが私でなければ今頃医局で取沙汰されていましたよ。」
高階の主張も正しいといえば正しい。
あの時他にも医局員は数名いたものの、Aと渡海が衝突した瞬間を目撃したのは高階のみだ。
彼一人でなければ――、大勢が見ていたとしたら。
恐ろしい話とまではいかないが、Aが精神的に参るだろう。彼女もそれほど弱くはないが。
だからといってコイツに説明する事情も義理もない、というのが渡海の心情である。
廊下での彼らの睨み合いは、木下が通りかかるまで続いた。
■
「なあんだ、知ってたの」
「………。」
「ええ…なんで落ち込んでるの…。罪悪感で生きてるような顔しないでよ」
「いや、罪悪感抱えるって」
それこそなんでさ、とAは呆れそうにもなるが、世良の気持ちも分からんでもない。
「渡海先生が話すなんて思わなかったな。隠すような話でもないけどね。」
「…うん」
言葉選びを間違えたかと思う程、世良は再び苦々しい顔とオーラと共に沈む。
(…そうか、話したのか。)
私が悪魔に憧れたんだという話。
父親が心臓病を患い、悪魔によって九死に一生を得たという話。
(まあ、その後は…不運な事故だったんだけど)
彼の手術が失敗したわけでもなく、父が望んだわけでもなく。ただただ不運な事故だった。
「世良くん」
「…はい」
まるで飼い主に怒られる直前の犬だ。外はそよそよと風がふいて、研修医二人を撫でている。
ベンチに腰掛けていたAは立ち上がる。
「話してしんぜよう。」
私達の過去のお話だ。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
