第223話：2人きり ページ29
そりゃまたどうして、とAは渡海の背に回しかけていた腕をぴたりと止める。
(……邪魔だからかな)
「言っとくけど邪魔って理由はない」
「……読心術をお持ちで？」
「今回はダメ。それだけだ」
「……」
「どうせアイツが独断したんだろ。だけど執刀医は俺だ」
つまり執刀医の命令だと。実際、その通りである。
だが、邪魔というわけではないのなら、他に理由があるんだろう。
(何でだろう…。田村さんがダメなのかな。確か、田村さんの入院日の時も…、)
さすがに大きな疑問にならざるを得なく、Aは一瞬思考した。
「返事は」
それにより間が空いたことに渡海は不服だったのか、不機嫌そうな声がAの首元から漏れた。
…まあ、どのみち執刀医の命令だ。
そも、こちらが受け入れようと受け入れまいと決定事項ではあるのだが。
ふう、と一つ息をつく。
「…はい。ショーチしましたー…」
「ん。じゃ、おやすみ」
「…オヤスミナサーイ」
主に寝るのはお前だけだがなちくしょう。
まだ夕刻を過ぎたあたりだ。窓の方面を仰ぎ見ると、黄昏が溶けかけていた。
まだ色々と残っているのに。
何時間拘束されるのか聞きもしなきゃ言われもしなかった。
一度、大きく息を吸って、吐く。
リネンの匂いがする。もう嗅ぎ慣れた。
相も変わらず、この仮眠室は彼の私物で溢れている。
ただ物が多いだけの清潔な部屋。
そういえば、自分が使用していたベッドは未だにマットレスが敷きっぱなしなのだろうか。
…いい加減に片づけられただろうか。
「……先生、寝ました？」
…緩やかな寝息が返ってくる。
寝たらしい。ぐっすりだ。
あまりにも早い眠りに、自分が彼の睡眠導入剤であるかのような錯覚を抱いた。
「私居なきゃ寝れないって、それ結構致命的ですねー…」
厳密には快眠ではない、という話だが、どちらにせよ一緒だ。
自分に責任はまずない…はずだが、ちょっとの同情はある。
≪「お前は―――、俺が同情してると思ってんだろ」≫
同情。
(……今は…、ダメだな)
ざわつきだした心をそっと押しとどめ、起こさぬように、渡海の背を撫でる。
明日はあーちゃんの所に行かなきゃ。きっとそろそろ手術の日程を決めてもいいはずだ。
ああ、その前に木下さんにも薬の成果を。渡海先生から通しておくべきか。
(………ああ、ねむたい…)
…本当に、眠たい。
重くなる瞼に逆らう余力もなく、Aは甘んじてその微睡を受け入れていった。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
