第218話：しのぎ ページ24
「たっ、高階先生、」
「何だ」
「これは……私にも原因があります」
「…」
「……」
とにかく素早さが肝心だと、Aは出たとこ勝負もいいとこに言葉を発する。
それは間違いではないが、適したものだったかというと微妙である。
再びの沈黙。こればっかりは胃が痛い。
「…はぁ」
すると、渡海がどっと疲れを吐き出すように溜息をつく。
Aの肩が一瞬びくりと跳ねたのを両者ともに見逃さなかったが、
渡海はするりと目を逸らし、仮眠室の奥へと一人引っ込んでいった。
パタンと扉が閉まると同時、医局で重苦しく迫っていた空気が霧散し、
Aは崩れるように椅子へ落ちた。
「大丈夫かい」
「はい。すみません、本当に…」
「君が謝る必要はない。…出しゃばったのも私だからな」
「……」
いや、あなたの判断は至って正常ですよ、という言葉も、今はAの口からは出てこない。
実際、多くの者はああいった行動をするだろう。
何せ、ドアを開けた先に女の胸倉を掴み引き寄せ睨みつけている男が居るのだ。
自分でも間違いなく高階と同じような言動をとる。
(…今は、何も言えない…)
心労が酷い。渡海の言うことに何も反論できなかった。
「…先生は、まだ帰っていらっしゃらなかったんですね。お疲れ様です」
「ああ…、うん。隼人さんの件で、色々とね。というか…他の医局員は…？」
あー、と緩んだ声を漏らしながら、Aはそっと目を逸らした。
さすがの高階も無人の医局をきょとんとしながら見回している。
「…私と渡海先生の対峙見るや否や逃げていきましたね」
「は？」
「アハハ」
苦笑。
■
「日曜日…。」
「コンクールの本番も近いんだってさ」
「へえ」
翌日の夕刻近く。隣を歩く世良の話に耳を傾けながら、Aはファイルに目を通す。
渡海の一言により、田村隼人――あの患者は一度はスナイプ手術を拒んだが、
高階の懸命な説得により、また改めて同意したそうだ。
そしてその父曰く、今週の日曜に手術を行ってほしいとのこと。
渡海も高階も構わないと同意し、その日に決定した。
「にしても、なんだか二人いつになくピリピリしてたような」
「…そうなの？」
「うーん。あの二人って弁える時は弁えてるけど、今回はそういうのじゃなかったなって。」
…弁えてるのは主に高階のみで、
渡海は単にめんどくさがってるというか、次の日には前日の衝突なんて忘れてるというか。
まあ、そこはあえてつっこまないでおこう。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
