第213話：丸印の意義 ページ19
心尖部から28ミリ左。83度の挿入角。
唯一丸印がついたのはその両方が噛みあったルートだけ。
何日も行った。心が折れかけたなんてことはないが、それでも苦労はした。思い出せるほどに。
ようやく丸印がついたときはハイタッチなどの歓喜でもなく、ひたすらの安堵。
その結果が残された資料をいともたやすく捨てられた。
その事実に、Aは。
(さすがとしか言いようがない)
ショックを受けるとかそういう話は無い。ただ、彼の能力にひたすら驚くだけ。
(無意味だったかな)
執刀医である彼が全て把握しているというのであれば、自分たちの行ったことというのは。
(いや…それは、なかったと思うけど)
けれども、上には上がいる。
そう理解した途端、あの丸印の意義はなんだったのかと問いたくなるのも事実。
怒りは無い。ただ漠然とした無力さがAを締め付ける。
高階の様子からして、渡海とはまさしく納得のいかない口論をしたのだろう。
Aはその時の現場を見ていない。
出払っており、そこに居合わせていたのは身近な者で言うなら世良や医局に残っていた職員だろう。
「……はぁ」
高階は重い息をつく。だがAの視線にハッと我に返り、目を伏せた。
「…すまないね」
「いえ。 …でも、これで手術自体は出来るようになりましたね」
「いや……」
「？」
.
「容赦ないっすねえ」
「…まったくだ」
その前に。このスナイプ手術―――ちゃんと把握していますか？
渡海が、田村隼人の父親に言い放った言葉だ。
要は、スナイプ手術にて二度のトラブルが起きたことを田村へ告げたらしい。
その一件も加わって、先程説明された事についてひと悶着あったようなのだが。
「三度目の正直…二度あることは三度ある……」
少なくとも不安で潰されかねない患者とその家族にかける言葉ではない。
的確な物言いであることは間違いないのだが、中々堪える。
「…でも……、ってことは、先生は田村さんに何も言ってなかったってことですよね？」
「……」
高階は押し黙る。Aはただ、ふと思った疑問を投げつける。
「今までのスナイプ手術の問題。どうして失敗のリスクを患者に説明しなかったんです」
渡海の説明に田村が動揺を示したのなら、つまりそういうことだ。
「それは…、」
「何も知らない患者に対して問答なしに手術をするというのは、」
「Aくん」
高階の声が、Aの言葉を遮る。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
