第195話：一足先の ページ1
「………。」
「………。」
渡海が自分たちの視界から去っていったあとに残ったのは、Aと速水の沈黙だ。
気まずそうな動きでAは速水を見た。
だが速水も同じことを思っていたのか、Aとかちりと目が合う。
「……ごめん」
「…ああ、俺もごめん」
実に馬鹿らしい口論だった、と二人は半ば苦笑しながらため息をつく。
一方、速水は「何故渡海先生に呼び出されたにも関わらず平然としていられるんだろう」と、
ある意味鋼の精神を持ったAに新たな疑問を抱いていた。
.
この人だったらきっと、「よくやったな」とか「上手」とか。
この爽やかな笑顔で褒めてくれるんだろうな、とAはぼんやり思う。
「ああ、今日はゆっくり休みなさい。明日からでいいから」
「すみません…」
「謝る必要はない。むしろこちらが急に言ったことだからね」
世良も高階も今から患者の手術ルートの確保を始めるとのことだった。
だが生憎、三日連続の当直を終えたAの身体が追いつくはずもない。
その為、こうして「明日から参加する」という旨を伝えた。
廊下で見かけた高階の後ろ姿は何やら思い悩んでいるようだった。
呼び止めるのに少し躊躇したが、こうして話しかければ爽やかに対応してくれている。
若干疲労の色は見えるが。
「じゃあ、気を付けて帰るんだよ」
「はい。お疲れ様でした」
「お疲れ」
Aは高階にぺこりと頭を下げ、彼の横を過ぎていく。
(…で、渡海先生のとこだな…)
気を付けて帰れと今しがた言われたが、果たして帰れるのかすら少し疑問である。
.
彼女を「渡海先生のお気に入り」と形容したことはあるが、
それを誤りであると思ったことは一度もない。
「Aさんも中々多忙ですよね」
「うん？」
「今日、渡海先生に呼ばれてたので。俺も人の事言えないですけど」
当直の時も頑張ってたらしいですし、と、どこか意味ありげな世良の言葉に、
高階はふと彼女の顔色を思い出していた。
「君は、彼から何か言われたりしたかい？」
「…渡海先生ですか？何かっていうのは…」
「そうだな…、私のこと、とか」
「え？いや…。高階先生について何か言われたことは無い、ですね」
「…そうか。ならいいんだ。」
世良は「？」と首を傾げたが、高階が再びにこりと微笑む。
何事もなかったかのように、二人は患者の心臓を模ったそれへと実験を開始した。
(彼女なら、あるいは)
…苦情を言い渡されるかも。
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理音(プロフ) - 更新して欲しいです！！待ってます！！ (7月16日 23時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
狐海(プロフ) - 更新楽しみに待ってます…！ずっと！！待ってます！！ (2023年4月20日 18時) (レス) id: ce22822f8d (このIDを非表示/違反報告)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月13日 19時) (レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
積み荷 - すごく面白くて続きが気になって三回もコメントするDS民ですこんばんは！もう更新はされないんでしょうか…きっとお忙しいのだと思います、事情も知らない外野ですがなんか応援してます！ (2020年2月19日 1時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
昇降機 - めちゃめちゃ面白いですいつまででも待ってます…！原作も読みましたが面白かったです(影響受けた)続きを楽しみにしてます…！ (2020年2月5日 20時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年7月21日 20時
