第171話:おはよう ページ26
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「…何してるんですか?」
「まだ何も」
「…何する気だったんですか」
「枕の務め果たして貰う気ではいたけど」
仮眠室。ソファの上。男女が重なって何やら口論していた。
彼女の真下には渡海。相変わらず憎らしいほどに涼しい顔をしていた。
ひとりで寝ていたはずなのに、いつの間に彼に抱かれるような形に収まっている。
背には彼の両腕が回され、うまいこと身動きがとれないでいた。
今まで抱き枕を行った時とは逆の体勢というわけだが、なるほど心地いい。
これはハマりそうだと自分も味をしめそうになるが、いやいやそんなこと言ってる場合ではない。
「…私寝てたんですけど……なんで渡海先生が私の下にいるんでしょう…」
「なんでって何?ここ俺のソファなんだけど」
「さては話通じてないですね先生?」
「あとでレンタル料出せよ」
「は!?金取るんですか!?」
「無許可で独占してたんだから当たり前だろ」
「今私を抱いてソファで寝そべってんの誰だよ!!」
枕の務めだとかなんだとか言われたが、この際無視である。
なんだこの状況は、とAは渡海を問い詰めたものの、まあろくな回答はなかった。
不意にAが動きを止めた。
「……今って何時ですか?」
「さあ」
「…午後の外来…」
「始まってんじゃねえの」
「あーーー…………」
タイムオーバーである。
Aは一応自分の右手首に目を移す。午後の外来開始時間からすでに10分が経過している。
5分程度の仮眠のつもりだったのにも関わらず、寝入って完全遅刻だ。
「………やらかした」
「そうだな」
「起こしてくれてもよかったんですよ!?」
「幸せそうに寝息立ててる可愛い教え子を起こせって?」
「微塵も思ってないくせによく言いますね!」
Aはがばっと顔を上げ渡海を見下ろしたが、肝心の彼はハッと鼻で笑うだけだ。
やっぱ思ってない。可愛い教え子とか思ってない。絶対分かった上で起こさなかったタチだ。
だが寝入っていたのは事実だ。誰かに起こしてもらうなどおこがましい願いだ。
Aは怒りを収めながらも反省し、とんとんと手の平で渡海の二の腕を叩いた。
「行くんで、放してもらえます?」
「今から?」
「当たり前でしょ。誰かさんと違って二度目キメれる立場じゃないんですよ」
「ちなみに累計睡眠時間は?」
「…………………ご」
「ご?」
「じゅうごふん……」
==作者==
なんで付き合ってないのか分かんなくなってきた
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snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白いです! (2018年9月22日 11時) (レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 橘花さん» とてもわかります(;ω;) 確かに続編あったら…とも思うんですが(海堂シリーズ読破者としては特に!)、渡海先生…渡海先生…orzってなります…(笑) へへへっ、自分のペースでもりもりやっていきます!!ありがとうございます! そうなのよ奥さん!不思議ね!! (2018年7月22日 0時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - ペアンロスわかります。。ベイストで続編うんぬんの話を聞いてさらにロス再燃。。褒めて欲しい主人公ちゃんと甘えを逃した渡海先生の肩落ち加減がかわいいです…!Kさんがたのしく書けることを祈ってます。追い込まないで…。で、2人まだ付き合ってないの奥さん?? (2018年7月19日 20時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 橘花さん» とても細かい所まで着目してくださっている!!!作者としてありがたいとこの上ありません(*´Д`*) (そして再びご返答遅れてしまいすみませんorz コメント自体に気づきませんでしたorzいつもありがとうございます…!) (2018年7月19日 13時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - 緊張してキモオタみたいな喋り方しそうですが、よければぜひ♪私は描写、丁寧できれいな言葉でだいすきです。その傾向なかったり…?!(笑)渡海先生の問答で「美しい…」の答えに「…はい」の…がすてきです(マニアック)案外ノリとテンポのいい2人がすきです! (2018年7月11日 19時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年6月14日 0時