第148話：二人 ページ3
「は？当直の交代？」
山積みになった紙を両手に、黒崎の言葉にAはオウム返しした。
「ああ。何でも、あっちに呼ばれているようでな。緊急で決まったんだ。」
「…なんで研修医に先輩の肩代わりさせるんですか」
「違う違う。人手の問題だ。お前しか居ないんだよ」
お前しか居ない、って便利な言葉だよな。責任は俺がとる、って台詞と同じくらい。
崩れかけるポーカーフェイスに耐えながら、Aは少し呆れた様子で言った。
渡海との鬼ごっこは失敗に終わり、あの後から数十分ほど、まだ業務に勤しんでいた。
この論文や資料の束を別室に持って行くだけで本日は終わりなのだが、道中黒崎に声をかけられた。
当直の交代。とある医局員が他の病院に呼ばれており、一週間ほど東城大を空けるとのことだった。
その間の穴埋め―――当直をAに投げてきた、というわけだ。
「…私、明日と明々後日当直なんですけども」
「………お前しか居ない」
黒崎はそのAの言葉に苦い顔をする。これは分かった上で投げてきたなコイツ。
明日、明後日、明々後日と、なるほどしばらく病院暮らし。
Aはこっそりと肩を落とす。
「…分かりました」
「悪いな」
「……いえ……」
上辺だけの詫びを入れて、黒崎は去っていく。
この廊下に誰も通っていなければ、今頃頭突きしていただろう。
「ははは……寝れない三日間がやってくるー……」
とほほ、とAの小さな嘆きは、廊下に吸い込まれていった。
■
「楠木秀雄さんとー…田村隼人さん？」
人気が少なくなった医局にて、患者情報を片手にAはぽつりと呟く。
(楠木…楠木……どっかで聞いた、ような…まぁいいか…)
高階のスナイプ手術が決定するというに、どこかAは無関心だった。
(田村……、ああ、父親が…だから先生たち忙しなかったんだな…)
厚生労働省、の字を目で追い、そこでやめた。
(あーちゃんの方は自然と私が主になるかなー…)
タブレットを見ながら、医局の扉を開ける。いつも通りの回診へと向かおうとした。
どん、と真正面から誰かと衝突した。
「おわっ！ごめんなさ」
「……邪魔」
「………ハイ」
ぶつかった彼はじろりとAを見下ろす。
ぶつかったことに対して咎めるより、通行の邪魔だと切り捨てる渡海は通所運転だ。
(…あれ？患者さんの検査じゃないのか…？)
「A」
「はい？」
横を通り過ぎた渡海が彼女を呼ぶ。
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snake20xjapan04(プロフ) - めっちゃ面白いです！ (2018年9月22日 11時) (
レス) id: b0aeedf16f (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 橘花さん» とてもわかります(;ω;) 確かに続編あったら…とも思うんですが（海堂シリーズ読破者としては特に！）、渡海先生…渡海先生…orzってなります…（笑） へへへっ、自分のペースでもりもりやっていきます！！ありがとうございます！ そうなのよ奥さん！不思議ね！！ (2018年7月22日 0時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - ペアンロスわかります。。ベイストで続編うんぬんの話を聞いてさらにロス再燃。。褒めて欲しい主人公ちゃんと甘えを逃した渡海先生の肩落ち加減がかわいいです…！Ｋさんがたのしく書けることを祈ってます。追い込まないで…。で、2人まだ付き合ってないの奥さん？？ (2018年7月19日 20時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 橘花さん» とても細かい所まで着目してくださっている！！！作者としてありがたいとこの上ありません(*´Д`*) （そして再びご返答遅れてしまいすみませんorz コメント自体に気づきませんでしたorzいつもありがとうございます…！） (2018年7月19日 13時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
橘花(プロフ) - 緊張してキモオタみたいな喋り方しそうですが、よければぜひ♪私は描写、丁寧できれいな言葉でだいすきです。その傾向なかったり…？！(笑)渡海先生の問答で｢美しい…｣の答えに｢…はい｣の…がすてきです(マニアック)案外ノリとテンポのいい2人がすきです！ (2018年7月11日 19時) (レス) id: 2798c105f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年6月14日 0時
