第131話：訳合1 ページ35
Aは俯きながら、木下と並んで歩く。
ぽつぽつと事の経緯を話していた。
まとまりのない話し方だった。だが木下はただ、うんうんと頷いていた。
「…だから…端的に言えば、患者さん無事でよかった、っていう…」
「うん」
「失敗自体もそうですけど、その後の対応が私…情けなくって…」
「うん」
「研修医にやれることなんて限られてるって分かってても、どうしても」
「うん」
そこまで話したところで、Aは再び資料で顔を隠した。
「木下さん……」
「……はい？」
Aの声は震えている。
それでも木下に何か必死に伝えたいことがあるらしい。
木下は咄嗟に彼女の背中をさすろうと手を伸ばしたが、Aの言葉の方が早かった。
「そんな優しい声出さないで…泣きそうになっちゃうから…」
「……あらあら」
それは予想外と言わんばかりに、木下は伸ばしかけていた手を降ろした。
「A先生って意外と泣き虫さんなんですね。」
木下は微笑む。Aは資料の下からそれを覗いていた。
悪意のないその言葉に、Aはもう子供の駄々のように唸る。
「…仕事中は基本我慢してますけど、私は結構涙もろい方だと思います…」
「それはそれは…」
「あの、このことは内緒にして頂けると」
「ええ、もちろん。」
むしろ他言して何になるのか、という類のものだが、Aは一応釘はさしておきたかった。
隠していた顔を覗かせて、木下のその返事にAは薄く笑った。
「……渡海先生には、こんな顔、見せたくないので」
瞬間、Aはふいっと顔をそらす。木下にも、最後の表情は見えなかった。
その言葉は照れ隠しのように思えた。でも一瞬だけだ。
鋭い木下は、その言葉が照れ隠しなどではなく、明確な「強がり」だとすぐに気づいた。
いや、強がり、と一概には言えない。
もっと複雑な、それでいて純粋な何かが絡んでいる。
木下は軽く首を横に振って、それ以上の推量はしなかった。
「ところでA先生」
「はい？」
「その渡海先生とこれから例の件でお話ですが」
Aと木下は同時に立ち止まる。
話し合いのためのラウンジはすぐそこだ。
「………………帰っていいですか？」
それは悲鳴にも似ていた。
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K(プロフ) - ふみさん» コメントありがとうございます！！大好きと言って頂けてとてもうれしいです（；▽；）！！ありがとうございます！！もはやこれ終わる予感がしない！って自分も思っております（笑）更新も頑張ってまいりますー！！ (2018年6月13日 23時) (
レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - はじめまして。3まで読ませていただきました。とてもKさんのお話が大好きです。いつまでも見ておきたいので完結しないでください！笑大変ですが更新頑張ってください！ (2018年6月13日 21時) (レス) id: 26dbac27a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» あ〜〜甘楽さんお久しぶりです！！コメントありがとうございます！！(；▽；)本当ずっとずっと読んでいただけてるんですね…！ありがとうございます…！ ドキドキいただきましたー！！やったぜ！！続編もバリバリ頑張っていきます！！(*´∀`) (2018年6月12日 18時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
甘楽 - お久しぶりです！いつもドキドキしながら楽しみに読ませて頂いてます！続編おめでとうございます！続編も楽しみにしてます！！ (2018年6月11日 23時) (レス) id: 6c0600def1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - メットさん» コメントありがとうございます！ワクワクドキドキして頂けてよかったです…！！書き甲斐があります(*´ω`*)！ たくさんの応援コールも本当にありがとうございます！！いっぱい頑張れます！！（笑）続編も楽しみにお待ちくださいませ(*ﾉωﾉ)！ (2018年6月11日 21時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月22日 21時
