第128話：ミスの先1 ページ32
「………。」
扉の前。病室の前。個室。
Aはその扉の取っ手を掴んだまま動けなかった。
「……Aさん。」
花房は、そろりとAの顔を覗き見た。
(………そう、だよね…。)
不安。極めて漠然とした。形容するなら、Aはそんな表情だ。
花房は少し俯く。
手が震えているわけでもなく、肩も震えてはいない。
血の気が引いているわけでも、今にも泣きそうなわけでも。
ただ、彼女は口を結んで、心の準備をしているようだった。
例の患者の元へは、Aと花房が回診にやってきた。
だが、花房はあのオペに同席していた。
不安がるのも仕方ない。
何より、ここに辿り着くまでAは花房には何も聞いてこなかった。
きっと、世良からはいくつか聞いているだろうが。
「……、失礼します」
Aはその引き戸を開き、一歩足を踏み出す。
そうすればどんどん患者の居るベッドへ真っ直ぐと向かっていった。
「…ああ。」
そんな彼女たちに、中老の男性は読んでいた本を閉じて、丁寧に向き直った。
「おはようございます。」
花房は点滴へと近づく。男性はそう言われてはにこりと微笑んだ。
「ああ、おはよう。えっと、そこの先生は初めましてかな」
「…はい。A Aと申します。」
「なるほど、君か。世良先生からは聞いているよ」
恐らく一昨日や昨日は世良がやってきたのだろう。
聞いた、というのは、本来の担当医はAであるという事実のことだろう。
渡海についてはもう何もつっこまない。
「……はい。お加減の程、いかがですか」
「うん、ずいぶん良くなった。一時はどうなるかと思ったもんだ」
男性は他人事のようにけらけらと笑う。
どうなるかと、思った。
(…本当に。本当に、どうなるかと)
彼はそんなつもりで言ったわけではないだろう。
自分が倒れた時の話をしているのだ。
それでもAは、あの時の自分のミスを思い出さずにはいられなかった。
思わず、彼と同調するように笑顔を張り付ける。
彼の顔色は良好だ。
世良から渡された記録にも目を通したが、検査にも異常はなく、
世良自身から見た上でも、特に患者の容態に変わった様子はないとのことだった。
実際こうしてみると、本当に何も異常はない。
何も。
(……よかった)
Aは患者を見下ろして、ただ安堵の表情を浮かべる。
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K(プロフ) - ふみさん» コメントありがとうございます！！大好きと言って頂けてとてもうれしいです（；▽；）！！ありがとうございます！！もはやこれ終わる予感がしない！って自分も思っております（笑）更新も頑張ってまいりますー！！ (2018年6月13日 23時) (
レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - はじめまして。3まで読ませていただきました。とてもKさんのお話が大好きです。いつまでも見ておきたいので完結しないでください！笑大変ですが更新頑張ってください！ (2018年6月13日 21時) (レス) id: 26dbac27a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» あ〜〜甘楽さんお久しぶりです！！コメントありがとうございます！！(；▽；)本当ずっとずっと読んでいただけてるんですね…！ありがとうございます…！ ドキドキいただきましたー！！やったぜ！！続編もバリバリ頑張っていきます！！(*´∀`) (2018年6月12日 18時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
甘楽 - お久しぶりです！いつもドキドキしながら楽しみに読ませて頂いてます！続編おめでとうございます！続編も楽しみにしてます！！ (2018年6月11日 23時) (レス) id: 6c0600def1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - メットさん» コメントありがとうございます！ワクワクドキドキして頂けてよかったです…！！書き甲斐があります(*´ω`*)！ たくさんの応援コールも本当にありがとうございます！！いっぱい頑張れます！！（笑）続編も楽しみにお待ちくださいませ(*ﾉωﾉ)！ (2018年6月11日 21時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月22日 21時
