第121話：異変1 ページ25
彼女は冷静に渡海の現状を読み取る。
顔色は良好。目の動きは少し鈍い。意識は濁り気味か。物への識別は完璧。
……特に異常はないように見える。しかし、それはそう「見える」だけだ。
「他の先生を呼びます。横になれますか」
「……A、ちゃん、」
「はい」
「………。」
Aは渡海からの言葉を待つ。
渡海は、こちらを覗き込むAをしばらく見つめた後、ぬっと腕を彼女に伸ばした。
「せん、」
せい。
最後の二文字は言葉にならなかった。
Aは腕を引っ張られる。
瞬間、するりとAの腕の下に渡海の腕が差し入れられ、彼の腕は背中に回っていく。
端的に言えば、抱きとめられた。
彼はそのまま彼女の首元に顔を埋め、
どさくさに紛れるようにソファの上にどさりと横たえる。
当然、Aを自分の真下にして。
「…………………。」
えっ。
「えっ？」
何。何。本当に何。
言葉が出ないとはこのことか。
吹けば飛ぶような年数しかまだ生きていないが、
ここまでその言葉が適した場面も中々遭遇しない。と、Aは頭を抱えた。
抱きしめられたのはまだいい。まだいいだろう。千歩くらい譲って。
だが、抱きしめられたままソファに倒されるとはどういうことだ。
「あー……と、先生？先生？」
あまりにも一瞬の出来事に数秒ほど頭がついていかない感覚を抱きながら、
Aは自分の身に文字通り乗っかった渡海の背中を揺すった。
先程の様子からして、これは別に異常事態ではない。Aは冷静にそう判断した。
「…………。」
渡海の反応はない。
まるでA抱き枕のように扱う彼は、ただゆっくりと肩を上下させている。
まさか。
「寝てるんですか先生」
返答は、寝息だけ。
「待て待て」
起きろ、起きろ。率直に言って重いんだよちくしょう。
べしべしとAは渡海の背中を軽く叩いたが、今度こそ彼は微動だにしない。
「…マジか」
彼の表情は確認できない。
首元がやけに熱い。吐息が引いては押しての繰り返しを行っている。
それは渡海が完全に寝入っている証拠だ。
「………どうしよう……」
正直照れよりも困惑の方が勝っている。
ここまでぐっすりと眠ってしまっては、起こす方が苦労する。
だが、本当にどうしたものか。
声をあげて救援を呼ぶのも考えはしたが、気はのらない。
彼の睡眠を妨害する可能性がある、というのもそうだが、
こんな場面を他人に見られては良い気はしない。
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K(プロフ) - ふみさん» コメントありがとうございます！！大好きと言って頂けてとてもうれしいです（；▽；）！！ありがとうございます！！もはやこれ終わる予感がしない！って自分も思っております（笑）更新も頑張ってまいりますー！！ (2018年6月13日 23時) (
レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - はじめまして。3まで読ませていただきました。とてもKさんのお話が大好きです。いつまでも見ておきたいので完結しないでください！笑大変ですが更新頑張ってください！ (2018年6月13日 21時) (レス) id: 26dbac27a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» あ〜〜甘楽さんお久しぶりです！！コメントありがとうございます！！(；▽；)本当ずっとずっと読んでいただけてるんですね…！ありがとうございます…！ ドキドキいただきましたー！！やったぜ！！続編もバリバリ頑張っていきます！！(*´∀`) (2018年6月12日 18時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
甘楽 - お久しぶりです！いつもドキドキしながら楽しみに読ませて頂いてます！続編おめでとうございます！続編も楽しみにしてます！！ (2018年6月11日 23時) (レス) id: 6c0600def1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - メットさん» コメントありがとうございます！ワクワクドキドキして頂けてよかったです…！！書き甲斐があります(*´ω`*)！ たくさんの応援コールも本当にありがとうございます！！いっぱい頑張れます！！（笑）続編も楽しみにお待ちくださいませ(*ﾉωﾉ)！ (2018年6月11日 21時) (レス) id: f4cc5215a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月22日 21時
