第54話：ふわふわ ページ7
「ん………」
かすれた声。慣れぬベッドの感覚と匂い。一度ゆっくりと瞬きをする。
そういえば、心臓血管外科―――佐伯外科の仮眠室で眠っていたのだとようやく思い出した。
なぜだか泣いていたような気がしたが、何故泣いていたのかは思い出せない。
ただひたすらに辛かったことだけを覚えている。
きっと悲しくて苦しい夢を見たのだと思う。
でも、まるで雪が一瞬にして溶けてしまったかのように何も残っていない。
(……熱、下がって、ないな…)
むしろ悪化しているのではないだろうか。
試しに寝返りを打とうとするが、身体が痛い。
少し動いただけで、脳がグラつき、どこかふわふわする。
(あ、これダメだ)
目の奥がひりひりと焼けるように痛い。
関節の痛みは増しているし、寒気だって止まらない。
「あ」
Aは寝返りを打った先で気づく。
枕元に、水の入ったペットボトルが倒れているのを見つけた。
渡海が置いてくれたのだろうか。
水分補給は発熱時には命だ。のろのろと上半身を起こし、水を口に含む。
親切にも既にキャップは開栓してあり、開けるのにはそこまで苦労しなかった。
やはり渡海には双子がいるのでは疑惑が彼女の中で再び浮上しつつある。
…そういえば、やけに静かだ。ペットボトルから口を放し、Aは気づく。
向こうの部屋の声は、常に壁を貫通して仮眠室に響くのだが、音ひとつしない。
(カンファレンスか…)
ソファの方へと視線を彷徨わせる。
こちらの目線が低いので正直なにも分からないが、人の気配はない。
渡海もカンファレンスに参加しているらしい。
(………わたし、ひとりか)
そう気づいた瞬間、ずきりと胸の奥が痛む。
ひとりという事実に、なんだか不安になってきた。
ペットボトルの栓を閉めて、枕元に放る。
Aは現実から逃げるように、毛布の中へともぐりこんだ。
(…ひとりは、いやだ……)
見ていた夢の内容が思い出せそうで思い出せない。
思い出さない方が、きっといい。きっと辛くなるだけだ。
(とかい、せんせ……)
無意識に、あの彼の名を心の中で呼ぶ。
邪魔、って言われるだろうか。突き放されるだろうか。
でも、ひとりで居ることの方が、よっぽど怖い。
こんなにも自分は弱かったろうか。
別段、強い自信はなかったが、熱は、こんなにも人を弱くしてしまうらしい。
なんてザマだろう。いつも元気な自分が、こちらを見て笑ってる。
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K(プロフ) - 夢喰。さん» 続編出ました！（笑）次はもうちょい甘々を詰めていきたいと思っています…！！楽しみにしてくださっていて本当に嬉しいです！！頑張っていきます！！(*ﾉωﾉ) (2018年5月22日 21時) (
レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰。(プロフ) - 続編が出ると聞いてきました！！やっぱり甘さが欲しくなりますね(*´°`*)渡海先生が夢主のことをどう思ってたりするのかとか...！楽しみで仕方がありません！！！この小説が大好きです！！ (2018年5月22日 16時) (レス) id: eb55596a4e (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» 大好きと言って頂けて、感謝するばかりです！！続けざまにコメント返信してすみません！（笑）いっぱい感想頂けたのでつい…！！これからもガンガン頑張っていきます(*´∀`*)！ (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» ああ〜〜いっぱい感想ありがとうございます(´；ω；`)本当に嬉しいでずー！！筋も、自分なりに頑張って組み立ててるのですが、くどいかなぁーとたまに不安だったので、そのお言葉を頂けて本当に嬉しいです。渡海先生も魅力的に伝わっているようで安心しました…！！ (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
えりか - ブラックペアンが好きで、あ、渡海先生が好きで、あ、ニノが好きで読ませて頂いてます！ほんとに筋書きがしっかりされててほんと読んでて飽きません！そして、とっても渡海先生が魅力的です！笑 ほんとにこの作品大好きです。たくさん感想を言いたいのにもう文字数が笑 (2018年5月21日 23時) (レス) id: ad8be1e361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月10日 0時
