第52話：行方1 ページ5
「あれ？Aは？」
「早退した、ってさっき黒崎先生が。風邪だって。」
「ふーん…あいつがねぇ」
速水は医局を見渡す。
そばにいた島津が彼女の行方を話すと、島津はまた資料をまとめはじめた。
そんな二人の会話を聞き、世良は作業中の手を止めた。
(そうか、帰ったのか)
Aが仮眠室へと入っていくのを最後に、彼女の姿はどこにも見えない。
となれば、帰宅したという線が普通だが、どうにも世良は腑に落ちなかった。
(…一人で、大丈夫だったのかな)
Aの寝起きの姿を思い返す。
どこかあどけなくて、放っておけばどこかに行ってしまいそうな、
見ているだけでもなんだか不安になった。
世良は何度か医局を放れ、患者のもとへ行ったり先輩に呼ばれたりと、
いつも通り、忙しなく病院内を右往左往していた。
そのうちにAは帰っていったのだろう。
だから、いつ仮眠室を出て行ったのかは世良も知らない。
「でもかわいそうだよなぁ」
一人の男性研修医が、速水と島津に話しかける。
もう一人も、つられるように三人の輪の中に入っていく。
「…はぁ？」
速水は怪訝そうに返答する。
島津も、何を言っているんだといわんばかりに不快そうに顔をしかめた。
「なんのこと？」
「だってあの渡海先生が指導医だぜ？生きた心地しねーって」
「そうそう。生贄だよな。俺らに回ってこなくてほんと良かったわ」
その会話を聞いていた医局員の何名かが、四人の方へと顔を向ける。
さすがに世良は聞き捨てならないとばかりに立ち上がりかけたが、
「貴方達がどう思うかは勝手だけど、せめて話す場所は考えたら？」
それを牽制するように、腕を組んだ島津がぶっきらぼうに言い放つ。
その言葉を合図に、二人の研修医はハッとしてあたりを見渡した。
逸らすように、その会話を見ていた上級医たちも自分たちの作業へ戻っていく。
研修医二人が世良の姿を確認すると、逃げるように医局から去っていった。
島津はそれを見送ることもしない。
黙っていくつかのファイルを持って、同様に医局を去っていく。
速水はそれを見ていた。入れ替わるように、田口が医局へ入ってくる。
「……うん？」
不穏な空気を察したのか、ただ速水の顔色の変化に察したのか、
戻ってきた田口はきょとんとした顔で医局を見回した。
「…なにかあったの？」
「……。」
ちら、と速水は世良を見やる。
睨まれているわけではないのに、世良はびくりと肩を揺らした。
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K(プロフ) - 夢喰。さん» 続編出ました！（笑）次はもうちょい甘々を詰めていきたいと思っています…！！楽しみにしてくださっていて本当に嬉しいです！！頑張っていきます！！(*ﾉωﾉ) (2018年5月22日 21時) (
レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰。(プロフ) - 続編が出ると聞いてきました！！やっぱり甘さが欲しくなりますね(*´°`*)渡海先生が夢主のことをどう思ってたりするのかとか...！楽しみで仕方がありません！！！この小説が大好きです！！ (2018年5月22日 16時) (レス) id: eb55596a4e (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» 大好きと言って頂けて、感謝するばかりです！！続けざまにコメント返信してすみません！（笑）いっぱい感想頂けたのでつい…！！これからもガンガン頑張っていきます(*´∀`*)！ (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» ああ〜〜いっぱい感想ありがとうございます(´；ω；`)本当に嬉しいでずー！！筋も、自分なりに頑張って組み立ててるのですが、くどいかなぁーとたまに不安だったので、そのお言葉を頂けて本当に嬉しいです。渡海先生も魅力的に伝わっているようで安心しました…！！ (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
えりか - ブラックペアンが好きで、あ、渡海先生が好きで、あ、ニノが好きで読ませて頂いてます！ほんとに筋書きがしっかりされててほんと読んでて飽きません！そして、とっても渡海先生が魅力的です！笑 ほんとにこの作品大好きです。たくさん感想を言いたいのにもう文字数が笑 (2018年5月21日 23時) (レス) id: ad8be1e361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月10日 0時
