第78話:喉 ページ31
AもAで、
今回ばかりは自分にしか非がないと思っているせいで(実際そうだが)
いつも通り渡海に強く出る、とはいかないのだろう。
「返すんだったらそれでいいよ」
「ぁぃ………」
渡海としては、勝手に服を拝借していたことに驚かなかったわけではないが、
かといってそんなに大袈裟にガタガタ震えられても困る、といったところだ。
「…あのな、取って食いやしねーから出てこい」
「……ぁい…」
■
「そういえば、今は何時?」
しばらくすれば、世良もAの姿(服装)に慣れ、
A自身もさして自分の状態を気にせずベッドに座ってくつろいでいた。
渡海にあの後ぴしゃんと怒られる…なんてことはなく、
前述通り、返すんだったらいいから、と、特に咎められることもなかったので、
Aの精神状態は安定していた。
世良も若干目をそらしながらも、Aの向かい側に座り、彼女と会話を交わす。
渡海といえば自分の住処であるソファで横になっていた。
「んー…、もう18時過ぎかな」
世良は自分の時計を確認し伝える。
「仮眠室から出るなら深夜の方がいいよね…」
「今日は俺当直だし、見つから無さそうなタイミングで呼ぶよ」
「本当?助かる。ありがとう」
「あ、今更だけど熱はどう?」
「んっと…」
言われて思い出したように、Aは前髪をかきあげて額に触る。
熱い。下がりきってはいないようだ。
あと、関係ないが割と汗でベタついている。シャワーをあびたい。
「…まだちょっとある、かな。測ってないけど…ちょっと楽にはなったよ」
「ん…そっか。ご飯とか水分補給とかは?」
「ご飯は猫田さんが持ってきてくれたの。水…も………、」
はた、とAは突如、指先を口元に添える。
(……あれ?喉、乾いて…ない……いっぱい寝たのに……)
それどころか。
(ずいぶん喉に満足感があるというか、すでに飲んだような感覚…)
Aは、自らの喉が潤っていることに少し困惑した。
さして気にするようなことではないが、しかし、長いこと寝ていたはずだ。
間違っていなければ、最後に寝たのは10時半あたり。そこから今まで起きなかった。
発汗もそこそこな上、こんなに寝ればカラカラに喉が渇いていると思ったが。
「……??」
「…Aさん?」
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K(プロフ) - 夢喰。さん» 続編出ました!(笑)次はもうちょい甘々を詰めていきたいと思っています…!!楽しみにしてくださっていて本当に嬉しいです!!頑張っていきます!!(*ノωノ) (2018年5月22日 21時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰。(プロフ) - 続編が出ると聞いてきました!!やっぱり甘さが欲しくなりますね(*´°`*)渡海先生が夢主のことをどう思ってたりするのかとか...!楽しみで仕方がありません!!!この小説が大好きです!! (2018年5月22日 16時) (レス) id: eb55596a4e (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» 大好きと言って頂けて、感謝するばかりです!!続けざまにコメント返信してすみません!(笑)いっぱい感想頂けたのでつい…!!これからもガンガン頑張っていきます(*´∀`*)! (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» ああ〜〜いっぱい感想ありがとうございます(´;ω;`)本当に嬉しいでずー!!筋も、自分なりに頑張って組み立ててるのですが、くどいかなぁーとたまに不安だったので、そのお言葉を頂けて本当に嬉しいです。渡海先生も魅力的に伝わっているようで安心しました…!! (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
えりか - ブラックペアンが好きで、あ、渡海先生が好きで、あ、ニノが好きで読ませて頂いてます!ほんとに筋書きがしっかりされててほんと読んでて飽きません!そして、とっても渡海先生が魅力的です!笑 ほんとにこの作品大好きです。たくさん感想を言いたいのにもう文字数が笑 (2018年5月21日 23時) (レス) id: ad8be1e361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年5月10日 0時