第70話:教授3 ページ23
なんだか今日はやけに機嫌がいいな、と黒崎は佐伯の後ろについて思う。
数時間前のカンファレンスの際は高階と言い争っていて、
もう見てる此方は非常にヒヤヒヤした。
そんなことも露知らず…知っていても無関心な彼と付き合うのは、黒崎もたまに疲れていた。
「教授、つかぬことをお伺いしますが、宜しいでしょうか」
「何かな」
佐伯も黒崎も、長い廊下を歩きながら話す。
「恐れながら、渡海に用があるにせよ、教授自身が赴く必要は…」
果たして、あったのでしょうか。
佐伯とて暇ではない。
それに、社会的地位が高い相手ならばともかく、(昇進を断り続ける)ヒラ医局員の彼だ。
なぜ、佐伯がわざわざ出向いたのだろう。
渡海など、教授室に呼び出すなりすればいいのに。
「顔を合わせたかったんだがね、会えなかった」
「……?」
「たまたま医局を通りかかったもので、ついでに、と思ったまでだよ。
深い意味はないとも。」
ひとつ黒崎は首をかしげたが、実際佐伯が医局を通りかかったのは本当だ。
ついで、というのは事実だろうし、それ以下でもそれ以上でもないんだろう。
「会えなかった、とは…?」
渡海に用があったのではないのか。
先程、渡海と話し合っていたのではないのか。
「ふふ」
――――――生贄に、ね。
佐伯は心の中で呟く。黒崎に届くことはない。
誤魔化すように笑う佐伯に、これは教えてくれないなと黒崎は判断し、
それ以上口を開くことはしなかった。
■
さすがに「佐伯教授」と叫ぶ声が医局から響けば何がなんでも起きるというものだ。
それでも、佐伯との話が終わったあとも渡海は再び仮眠室のソファに沈んでいた。
ふつふつと腹の中で煮えるそれを冷ますため、渡海は目を閉じる。
≪「ずいぶんと、彼女を気に入っているようじゃないか。」≫
あんただって人の事言えないだろうが。何を御機嫌に言っているんだか。
「んん…」
後ろで小さく呻く声に、渡海は上半身を起こす。
病人が眠るそのベッドを見やると、相変わらず毛布にくるまって眠っていた。
そういえば、カンファレンスから戻った後からずっと様子を見ていない。
ただ起こすまいとしていた結果なのだが。
猫田といえば、もういない。数時間前に花房に引きずられて出て行った。
既に17時半を過ぎている。
自分がカンファレンスから仮眠室に戻ってきたのは11時過ぎ頃。
先程、佐伯がやってきた時も彼女が起きた素振りは無かった。
そろそろ起きるだろうか。
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K(プロフ) - 夢喰。さん» 続編出ました!(笑)次はもうちょい甘々を詰めていきたいと思っています…!!楽しみにしてくださっていて本当に嬉しいです!!頑張っていきます!!(*ノωノ) (2018年5月22日 21時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰。(プロフ) - 続編が出ると聞いてきました!!やっぱり甘さが欲しくなりますね(*´°`*)渡海先生が夢主のことをどう思ってたりするのかとか...!楽しみで仕方がありません!!!この小説が大好きです!! (2018年5月22日 16時) (レス) id: eb55596a4e (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» 大好きと言って頂けて、感謝するばかりです!!続けざまにコメント返信してすみません!(笑)いっぱい感想頂けたのでつい…!!これからもガンガン頑張っていきます(*´∀`*)! (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - えりかさん» ああ〜〜いっぱい感想ありがとうございます(´;ω;`)本当に嬉しいでずー!!筋も、自分なりに頑張って組み立ててるのですが、くどいかなぁーとたまに不安だったので、そのお言葉を頂けて本当に嬉しいです。渡海先生も魅力的に伝わっているようで安心しました…!! (2018年5月21日 23時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
えりか - ブラックペアンが好きで、あ、渡海先生が好きで、あ、ニノが好きで読ませて頂いてます!ほんとに筋書きがしっかりされててほんと読んでて飽きません!そして、とっても渡海先生が魅力的です!笑 ほんとにこの作品大好きです。たくさん感想を言いたいのにもう文字数が笑 (2018年5月21日 23時) (レス) id: ad8be1e361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年5月10日 0時