第7話：迷子2 ページ9
女の子はやはりぽろぽろと涙を流しはじめる。
決定打としては、Aがこうして頭を撫でて安堵させたことなのだが。
ひとつ、ふたつ、みっつ、と流してから、女の子は涙を拭った。
…強い子だ、とAは思った。きっと声をあげて泣くだろうと思った。
サッと泣き止んで、こちらに向き直る。
その幼い瞳に射抜かれそうになりながら、Aは笑顔を見せた。
「可愛い可愛いお姫様。あなたの名前を教えてほしいな」
「あーちゃん、っていうの…」
「よーし、あーちゃん。一緒にまま捜そうね。」
「うん…」
Aはすぐさま女児の身体に目を向ける。
怪我はないか。もし怪我があれば、一刻も早く処置を施したいところだが、
幸いそんな形跡はない。
歩き方もちゃんとしていた。
足をくじいたとか、そもそもあーちゃんは痛みなどは訴えていない。
(…よし。…さて、なんで病院に来たんだろう。場合によっては小児科…)
「あーちゃん、どうして病院に来たの？」
「まま、おなかにあかちゃんがいて……けんさ？を、しにきて…」
あーちゃんの言葉は切れ切れだが、ちゃんと彼女に届いた。
オーケー、目星はついた。産婦人科か。
「あーちゃん、みんなと遊んでたんだけど…」
「うん」
「ままの声がしたから、そっちにいったら、だれもいなくて…」
さらに捜索場所を絞ることができた。
みんなと遊んでいた、というのは、恐らく。
この子と同年代の子供と遊んでいた、ということだ。
小児科もそうだが、産婦人科の近くには、
同伴している子供が退屈をしないように遊べるスペースがある。
あーちゃんはそこで、同じようにやってきた子供たちと遊んでいたのだろう。
ママの声がした、というのは、ママの検査が終わり、彼女がこの子を呼んだのだろう。
しかし、あーちゃんは行き先を間違え、
このひとけの少ない廊下までまでひとりでやってきてしまった。
(娘の姿が見えないとなったら、お母さんまず必死に探すだろうし、
そもそも放送も鳴るはず。ということは…)
きっと、あーちゃんの言う「ママの声がした」というのは聞き間違いだ。
未だに放送も、そしてこの女の子を探す大人もいないということは、
母親はまだ検査中の可能性が高い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 859人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
K(プロフ) - まきさん» ここにも原作を読んでいる方が…！同士よ…！！ 小説も楽しみにしていただいてありがとうございます！ゆるーい感じで楽しんでやってください！ (2018年5月11日 16時) (
レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
まき - こんにの〜Kさんの、小説大好きです！！私も、原作読了してまして、この小説の次の展開と、ドラマを楽しみにしてます！ (2018年5月10日 21時) (レス) id: db7ab848e3 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 萌さん» ふおおお、なんと…！！！本当にうれしいです…ありがとうございます(；ω；) えええ！！周りに原作を呼んでいる方が少ないのでとても感激…！！！ドラマも共々に楽しんでやってください…！！！(*／ω＼) (2018年5月5日 22時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
萌(プロフ) - こんばんは(._.) K様の小説がとても好きで、初めてお気に入り機能を使っちゃいました！ちなみに、私も原作読了しておりまして、この小説のこれからの展開をドラマとともに楽しみにしております！ (2018年5月5日 20時) (レス) id: ff80283c46 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» もったいないお言葉…！！！応援ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！！今後の展開も見守ってやってください(*^▽^)/ (2018年5月5日 16時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：K | 作成日時：2018年5月3日 1時
