第46話：体調不良 ページ48
「……はっ、今何時？」
「7時」
「…？？ 世良くんいつもより早いね？」
慌てて時間を確認するが、思いの外早い時間でAは少し驚く。
世良が既に来ているということは、もう8時あたりなのだと思っていたが。
だが、実際いま医局には世良と自分以外いない。また上級医はどっか行ったらしい。
「ちょっと、やることあったんだよ。ほら、立てる？」
「うん……。」
世良に手を貸してもらい、もたつきはするが、Aはなんとか椅子から立ち上がる。
世良が握る手の力が妙に強い。甘えて僅かに握り返すと、またぎゅっと握り返された。
あれ、嫌がらないんだ。Aは世良を見上げようとしたが、
肩からずり落ちそうになったブランケットに気をとられる。
「…あ、このブランケット世良くんの？ありがとうね」
「いや、俺のじゃないけど…」
「？じゃあ……」
ばたん。どこかの扉が閉じる音がする。
仮眠室だ。
「あ…っ、おはようございます。」
世良は条件反射のように、仮眠室から出てきたその人物に頭を下げる。
見よう見まねのように、Aもそれに続く。
「………、おはようございます……」
一瞬目をそらしかけたが、渋々といった形で頭を下げる。
「……………。」
そんな二人の挨拶に応答する様子もなく、渡海はつかつかと二人のもとへ歩いてくる。
世良を見上げてから、Aを見下ろす。ただ黙って、見つめるように。
世良もAも、少し狼狽える。世良は特に、Aを守るようにわずかに前に出た。
「ちょっと渡海先生。今Aさんは――」
「仮眠室に居ろ」
「…え？」
「そのブランケット持って。お前は業務に戻れよ」
最後は世良に言い放つ。それだけ言い残すと、渡海は医局から出ていく。
二人とも追いかける気はないが、Aはただ昨夜のことを思い出して戦慄する。
「…Aさん？寒い？」
俯き、僅かに震えるAの様子を見て、世良はただ心配する。
彼女の表情を覗き込むが、寒いというよりは、どこか不安げだ。
「……ううん。だいじょぶ…。わたし、仮眠室にいるね。」
「…付き添うよ」
「平気平気。渡海先生が戻るまでベッドで休んでるよ。」
「……でも、」
「へへ。世良くんお人好しだよね。やることあるんでしょ？」
だから、ね。そういって、Aは握っていた手を放す。世良も大人しくその手を放した。
(…お人好し…か)
君だけには、言われたくない。
世良は、Aが仮眠室に入っていくのを見送った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 859人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
K(プロフ) - まきさん» ここにも原作を読んでいる方が…！同士よ…！！ 小説も楽しみにしていただいてありがとうございます！ゆるーい感じで楽しんでやってください！ (2018年5月11日 16時) (
レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
まき - こんにの〜Kさんの、小説大好きです！！私も、原作読了してまして、この小説の次の展開と、ドラマを楽しみにしてます！ (2018年5月10日 21時) (レス) id: db7ab848e3 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 萌さん» ふおおお、なんと…！！！本当にうれしいです…ありがとうございます(；ω；) えええ！！周りに原作を呼んでいる方が少ないのでとても感激…！！！ドラマも共々に楽しんでやってください…！！！(*／ω＼) (2018年5月5日 22時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
萌(プロフ) - こんばんは(._.) K様の小説がとても好きで、初めてお気に入り機能を使っちゃいました！ちなみに、私も原作読了しておりまして、この小説のこれからの展開をドラマとともに楽しみにしております！ (2018年5月5日 20時) (レス) id: ff80283c46 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» もったいないお言葉…！！！応援ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！！今後の展開も見守ってやってください(*^▽^)/ (2018年5月5日 16時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：K | 作成日時：2018年5月3日 1時
