第39話：案じる ページ41
≪「喜べよ、『憧れの渡海先生』だろ？」≫
「…憧れの渡海先生、ね」
夜景を見つめながらぽつり、Aは小さく呟いた。
僅かに瞬く星空を仰ぎ見る。
「もう三年も前に言ったことじゃないか。」
そんな彼女の言葉は、星空に吸い込まれた。
■
「あれ、…………Aはどこへ？」
「………さぁ…」
「……さすがに、どこ居るかぐらいは伝えてほしいんですけどね」
「…すぐ戻ってきますよ」
「…そうですね」
ふたりの男女、上級医と看護師が、心臓血管外科医局で資料をまとめながら話し合う。
二人は、姿の見えないAを案じているようだ。
どこにいるかも連絡ひとつないことに上級医は少し苦言を漏らすが、それ以上は何も言わない。
彼女の身に起きたことを思えば、何も言えなかった。
それに、看護師の言い分も正しい。
Aは勝手に帰ったりはしないし、すぐに戻ってくるはずだ。
彼女は猪突猛進なところはあるが、無責任ではない。
何より患者を想う心は一人前だ。
看護師は、ふとあの血の気のないAの姿を思い出す。
あの後の手術…縫合は渡海が受けた。迅速に、正確に。本当に一瞬の出来事だった。
終わるなり、渡海はすぐに去って行った。自分の教え子など気に留めた様子もない。
彼女は立ち尽くしたまま。
見かねた新人の花房がAを揺さぶり、手袋や帽子、
マスクを外すのを手伝っていたが、Aはどこか上の空だった。
途端、「気分が悪い」と言い出して、ふらふらとどこかに去って行った。
誰も止めなかった。誰も止められなかった。
…猫田が、追いかけようとしていたのは見間違いだろう、と看護師は思う。
だって、あの猫田だ。Aが女版の世良だとしたら、猫田は女版の渡海だ。
猫田とAは実質、対になっている。
きっとあの二人の相性は良いとは言えない。現時点では。
「…Aさんも、やめちゃうと、思いますか。」
「…」
口をついて出た看護師の言葉に、上級医は返す言葉が見当たらない。
「……私、まだ勤めて三年ですけど。
Aさん、今まで見てきたどの研修医よりも、手先が器用だなって思うんです。
今回の縫合は、失敗しちゃいましたけど。」
看護師は資料を手に俯く。
「…俺もそう思いますよ。本当に、あの子は器用だ。
だから、渡海が指導医になったときは、上の考えを疑いました。」
医局が静まる。一人を除いて、皆Aの精神を案じていた。
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K(プロフ) - まきさん» ここにも原作を読んでいる方が…！同士よ…！！ 小説も楽しみにしていただいてありがとうございます！ゆるーい感じで楽しんでやってください！ (2018年5月11日 16時) (
レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
まき - こんにの〜Kさんの、小説大好きです！！私も、原作読了してまして、この小説の次の展開と、ドラマを楽しみにしてます！ (2018年5月10日 21時) (レス) id: db7ab848e3 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 萌さん» ふおおお、なんと…！！！本当にうれしいです…ありがとうございます(；ω；) えええ！！周りに原作を呼んでいる方が少ないのでとても感激…！！！ドラマも共々に楽しんでやってください…！！！(*／ω＼) (2018年5月5日 22時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
萌(プロフ) - こんばんは(._.) K様の小説がとても好きで、初めてお気に入り機能を使っちゃいました！ちなみに、私も原作読了しておりまして、この小説のこれからの展開をドラマとともに楽しみにしております！ (2018年5月5日 20時) (レス) id: ff80283c46 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» もったいないお言葉…！！！応援ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！！今後の展開も見守ってやってください(*^▽^)/ (2018年5月5日 16時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月3日 1時
