第19話：訪ねる2 ページ21
Aは、毛布から露わになった渡海の顔を覗き込む。
肩が規則的に、ゆっくりと上下する。睡眠時特有の、ゆるやかな呼吸。
渡海の目はぴったりと閉じており、こちらに反応する様子はまずない。
「…。」
Aは、足音を立てないようにこっそりとソファの前へと回り込んだ。
渡海が起きる気配はない。
「…憧れの渡海先生、ね」
Aは、あの日のことを思い出していた。
黒崎教授から、指導医が渡海に変更されたこと。
渡海がこちらの手首をつかんで笑っていたこと。
≪「喜べよ、『憧れの渡海先生』だろ？」≫
ああ、喜んだだろう。あなたの実態を何も知らなければ。
腕が良い。患者を救ってくれた。――――――佐伯式をこなすもう1人。
たったそれだけだったら、どれだけ自分はあの通告を喜んだろう。
≪「腕のいい医者は――、何やっても許されるんだよ」≫
そんなわけないだろう、と、あの時渡海を殴り掛からなかった自分を誰か褒めてほしい。
あの時はずいぶんと腹を立てた。さっさと世良とあの場から去ったのを覚えている。
…同時に、Aはあの言葉の意味を薄らと考えていた。
(あれは……、佐伯教授に対する皮肉、だろうか)
あの言葉は――――そう。佐伯だって。
佐伯式を行える、神様。佐伯だって、言えることだ。
佐伯は神様だ。腕の良い医者とか、そんなもんじゃない。
皆、あの佐伯式を目指して、目指せない。届かない領域にいる人。
(…佐伯教授も、腕がいいから。)
だから、何をやっても許される。
遠回しにそう言っているのではないかと、Aは思っていた。
―――だからといって、あの言い分には絶対に納得できない。しない。
…でも。そうなのだろう、と。偶に達観する自分も居る。
患者だって、治ればそれでいい。
自分のことを治してくれる医者が、いい医者で。
心があれば患者を救えるか。
否。
腕があれば患者を救えるか。
…然り。
(わかってる。わかってるよ)
Aには、まだ技術がない。腕がない。
あるのは心だけだ。
どれだけ手先が器用といわれようと、どれだけ基本手技が上手だと言われようと、
(私は、怖い。)
だってまだ「救えない」。
無力であるということが、どれだけ辛いことなのか、Aはよく知っている。
「…憧れてるよ、そりゃ。」
だって、腕いいもん。あなたは必ず患者を救うから。
するり。Aは、その小さな手を、眠りこけている渡海の頬へと添えた。
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K(プロフ) - まきさん» ここにも原作を読んでいる方が…！同士よ…！！ 小説も楽しみにしていただいてありがとうございます！ゆるーい感じで楽しんでやってください！ (2018年5月11日 16時) (
レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
まき - こんにの〜Kさんの、小説大好きです！！私も、原作読了してまして、この小説の次の展開と、ドラマを楽しみにしてます！ (2018年5月10日 21時) (レス) id: db7ab848e3 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 萌さん» ふおおお、なんと…！！！本当にうれしいです…ありがとうございます(；ω；) えええ！！周りに原作を呼んでいる方が少ないのでとても感激…！！！ドラマも共々に楽しんでやってください…！！！(*／ω＼) (2018年5月5日 22時) (レス) id: ef8449c676 (このIDを非表示/違反報告)
萌(プロフ) - こんばんは(._.) K様の小説がとても好きで、初めてお気に入り機能を使っちゃいました！ちなみに、私も原作読了しておりまして、この小説のこれからの展開をドラマとともに楽しみにしております！ (2018年5月5日 20時) (レス) id: ff80283c46 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 甘楽さん» もったいないお言葉…！！！応援ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！！今後の展開も見守ってやってください(*^▽^)/ (2018年5月5日 16時) (レス) id: 8206d0720a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2018年5月3日 1時
