VI ページ6
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歩き始めて十分程。梅雨のジメジメした湿気と夏になりかけの暑さの所為で、僕のTシャツはすっかり汗でびしょびしょになっていた。
あぁ……嫌だ。
雨でもないのにジメジメしているこの空気が僕は大っ嫌いだ。まるで僕の心のようだから、なんて詩人じみた言葉が頭に浮かび、何だか恥ずかしくなる。けど、本当にそう思っていたりもする。
降りそうだけど、降ってはいない。泣きそうだけど、泣いてはいない。でも、もしかしたら僕の心はそんなシンプルなもんじゃなくて、もっとぐちゃぐちゃしているのかもしれない。
気がつくと僕は、君の家の前に着いていた。
白くて小ぢんまりとした、可愛らしく君らしい一軒家。
声が出なくなった君に対して過保護になった親から逃げるようにして実家を出たら、今度は声が出なくても暮らしやすい機能が付いた家を、わざわざ建てられてしまったそうだ。
「貰うのは悪いけど、折角作ってくれた物を貰わないのはもっと悪い」と言って、君は渋々とこの家に住んでいる。
結婚したら、彼をこの家に越させる予定らしい。
愛する人との二人暮らしというのは、どんなに幸福な事なんだろう。
そんな事を考えていたら何だか無性に君に会いたくなってきて、思わずインターホンに手が伸びる、が、やめた。
伸ばした手を右にずらして、手紙をポストに差し込む。手紙はあっさりと、パサりと音を立てて向こう側に落ちた。
会って何をすると言うんだ。君だって話したいことは全て手紙に書いただろうし、そもそももう夜も遅い。
迷惑なだけだ。そう思って踵を返すと、目の前に―――
「っ…」
―――君が、立っていた。
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空ノ寂(プロフ) - 洋子＠honeyworksさん» ありがとうございます！そう言っていただけて、光栄です！ (2017年12月31日 21時) (
レス) id: 6114dac4c8 (このIDを非表示/違反報告)
洋子＠honeyworks - アドバイスのところから来ました！とても綺麗で、繊細な文章、ストーリーだと思いました。感動しました。 (2017年12月31日 21時) (レス) id: 18955702f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空ノ寂 | 作成日時：2017年12月24日 23時
