９話 ページ10
声の主が誰なのかなんて、すぐにわかった。記憶にあるそれとは違い、大分低い声になってはいるけど、忘れるはずが無い弟の声。どんな顔をして会えばいいかわからない中、昔のように微笑んでその名を呼んだ。
「シュウ。」
◇
何度も夢に見ては、起きる度に絶望に落とされた。せめて夢の中で会えるのならと、心踊らせ眠りにつく、それがせめてもの救いであった。
今、この群青色の瞳に映るその姿は、夢のような不確かなものでは無い。手を伸ばせば触れることが出来て、言葉を投げかければ帰ってくる。この日をどれだけ待ち望んだのだろうか。
「…待ちくたびれたんだけど。」
溢れ出そうな想いとは裏腹に、選んだ言葉も声色もそっけなくなってしまう。
「うん、ただいま。」
そう言う姉の姿は、記憶にある姉と変わらぬ笑顔を浮かべる。花が綻ぶような、懐かしい笑顔。
大人びてはいるが昔と何ら変わらない顔、風になびく、宝石を溶かしたような髪、自分をしっかりと映してくれる金の瞳、抱きしめてくれた細い腕、包み込んでくれた胸。全てが全て懐かしく、愛おしい。
1歩、また1歩と歩く度に近づいていく距離。目の前まで来たが、情けないことにどうしていいかわからない。そっと指で姉の耳に髪をかければ、その手ごと姉の細い指が包み込む。気がつけば覆うように包み込んでいた。
昔は、姉の方が身長が高かったはずだ。女にしては身長が高いとはいえ、自分には及ばぬ体は、すっぽりと包み込むことが出来る。ぎゅう、と力を込めると、1つの手は背中に、もう1つは頭にまわされ、あやす様に撫でられる。
おかえり、と呟いたと思うが、それが声らしい声になっていたかはわからない。これが夢であるのだとしたら、永遠に覚めなければいい、それもまたいいだろう。
ほんの僅かに、目の淵に水が溜まった事は誰にも知られることは無い。たとえそれがシュウ自身だったしても。
「姉貴！。」
「姉様！。」
夢をぶち壊す声が響けば、回されていた手は緩やかに離された。アヤトやカナトに続いて他の兄弟も出てくると思い思いの言葉を発し、もは自分と話すことは出来なくなった。
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さらら(プロフ) - チョコミカンさん» ありがとうございます、作品を褒めてもらうととても嬉しいです。お返事が遅くなって申し訳ありませんでした(_ _) (2019年4月14日 1時) (
レス) id: 38606b6bbe (このIDを非表示/違反報告)
さらら(プロフ) - りこ63さん» コメントありがとうございます。読みにくいと言うお声を頂いてなるべく善処しているつもりですが、なにぶん癖で書いているので申し訳ございません。お読み下さってとても嬉しいです (2019年4月14日 1時) (レス) id: 38606b6bbe (このIDを非表示/違反報告)
チョコミカン - 面白いです！更新頑張ってください！ (2018年12月23日 16時) (レス) id: ea092a75bc (このIDを非表示/違反報告)
りこ63(プロフ) - 面白いけど、改行使った方がいいかも (2018年12月6日 18時) (レス) id: b104c4683b (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - さら！うまいよ！！面白いよ！！あ、Twitterで四葉美雪と名乗ってる優希です。(σ≧▽≦)σ (2017年12月19日 19時) (レス) id: 162361c584 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さらら | 作成日時：2016年4月22日 17時
