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台所に顔を出すと、あらかた食事の準備が終わっていた。
お父さんもいる。
「お父さん、おかえり」
「ただいま。…Aこそおかえり」
「ただいま…？」
ちょっと不思議な会話をしてから、椅子をひいて座った。
しばらくして、食事の準備が終わったお母さんも椅子に座る。
「…千尋、なかなか帰って来ないね」
「そうね…」
千尋からの連絡がないかお母さんが携帯を取り出して画面を確認する。
「わっ。今日帰って来れないって」
「えっ？」
急に用事とか入ったのかな？
「祐太君のご両親のとこだって」
「そうか。だったら安心だ」
「…ユウタ君？」
初めて聞く名前。
「そっか。Aは会ったことないわね。千尋の旦那さん」
旦那さん…旦那？
「えっ、千尋結婚したの？！」
「そうよ。こないだ家に結婚の挨拶にも来てね」
なんでもないような感じで話してるけど、私はこれ聞いたの初めてだから！
ちょっと動揺もしてる。
「こういうのって、すぐ姉にも報告するもんじゃないの？」
「どうせ年末帰ってくるからその時でいいだろってなったんだよ」
電話とかで知らせるもんじゃないの…？
ちょっと脳内で引っかかっていると、
「まさか千尋が先だとはね。Aも早いとこ連れてきてよ。そういう人」
お母さんが軽い調子でそんなことを言った。
「うー…出来たらね」
頭の中をよぎった川西さんの顔。
なんとなく親にはまだ付き合ってる人がいる事実は伝えたくなくて、軽く受け流した。
「じゃあ、３人で食べましょうか。ほら、今日の煮物はうまく出来たんだから」
確かに、お母さんの煮物はとびきり美味しかった。
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作者名：さら | 作成日時：2021年6月6日 11時
