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凝り固まった背中を伸ばし、トランク片手に車両を降りると、冷たい風が頬を撫でる。
一年振りの名古屋はさほど変わっていなかった。
変わったところを強いて言うなら建物の工事をしているところがあるってぐらい。
相変わらず、都会特有の流動感というものはある。
同じ都会でも大阪とはまた違う雰囲気。
人の流れに沿って駅を出ると、真奈美の姿を見つけた。
「おかえり〜待ってたよ」
挨拶もそこそこに、そのまま真奈美が予約してくれた一押しのレストランに入り、女子会。
北風とは真逆の暖かい暖房の風が頬を撫で、コートを脱いで背もたれにかけた。
「ここね、海老フライがすっごく美味しいの」
ということで、２人とも海老フライを注文。
注文を取りにやってきた上品なウエイトレスが頭を下げ、厨房に帰っていったところで、
「もう、びっくりしたんだからね」
開口一番、そんなことを言った。
「うん…色々と心配させてごめん」
私が電話を一方的に切り、しばらく音信不通になった件のことだろう。
川西さんとよりを戻した後、真奈美にもそのことを報告し、心配させたことを謝ったのだけど…
「で、何があったの？」
どうやら詳細を聞きたいらしい。
「私が勘違いしててくれただけだから」
「えー、教えてよ」
他の話題に変えようとしても、一向にここから離れない。
料理を食べ始めてからもずっと言っている。
「…分かったよ」
しつこい真奈美にとうとう私が折れ、話すこととした。
スマホで検索した画像を見せる。
「じゃあ…この人、分かる？」
「クルミルクの胡桃」
コンビ名だけでなく個人名も即答。さすがお笑いマニア。
「この子のことを本当の恋人なんじゃないかって、疑った」
「…そんな訳ないじゃん！」
そして盛大に笑われる。
「こんなこと心配してたの、」
「でも私がふっかけで『キスしてましたよね』って言ったら、川西さん、あからさまに困ってたもん。彼女が疑いたくなる気持ちも分からない？」
「それも分かるけど。胡桃ちゃんが酔ったらキス魔になるって話は結構有名だよ」
どこまで芸人さんの情報を把握してるんだ。
「そっかぁ。そんなことになってのか…」
真奈美は笑うだけ笑ってから、またもやとんでもないことを言い出した。
「…じゃあ、後はプロポーズを待つだけだね」
「…はぁ？！」
話が飛躍しすぎてる。
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作者名：さら | 作成日時：2021年6月6日 11時
